社長の配偶者に対する役員報酬による節税に関する注意点 | アークス総合会計事務所のブログ

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税務上の要件を満たせば、社長及び役員の報酬を損金(税金計算上の費用)とすることができます。

中小企業の場合、社長の配偶者が【無償で】手伝われている会社が多数ありますが、その方に対して役員報酬を支払うことで節税効果が得られます。
今回は、この点について説明をし、またその際の注意点についてもお話しします。

1.どのようにして節税効果が得られるか

(1)配偶者控除の枠内での役員報酬

所得が年間103万円以下であれば、所得税がかかりません。
また、配偶者の所得が年間103万円以下であれば、配偶者控除を受けられる上に、社会保険も扶養になることができます。
よって、配偶者が無償で手伝われている場合に、その方に対してこの枠内で役員報酬を支払ったとしても所得税は発生しません。
また、その役員報酬を会社の損金とすることができるため、法人税の節税になります。

(2)累進課税の税率による節税効果

日本の所得税は累進課税制度を採用しています。
この制度は、税金の計算基礎となる所得額が増えるほどより高い税率を課する課税方式のことです。

役員報酬の予算枠が決まっている場合において、その予算を1人に集中させるより2人に分散させることで、
それぞれの課税される所得額が少なくなります。その結果、累進課税制度の中でより低い税率が選択されます。


2.具体例

具体例として、役員報酬の予算が50万円の場合において、社長のみに報酬を支払う場合とそれぞれに支払う場合の税額の違いは
次のとおりとなります。

(A)社長のみに報酬を支払う場合

社長の報酬    : 月額50万円
配偶者の報酬 : 月額0円

a.社長の所得税額

給与所得金額:600万円(=50万円×12ヶ月)-174万円(給与所得控除)=426万円
課税所得金額:426万円-38万円(基礎控除)-38万円(配偶者控除)=350万円

所得税額:350万円×20%-42,75万円=27.25万円

b.配偶者の所得税額

所得税額:0円

(B)それぞれに役員報酬を支払う場合

社長の報酬:月額42万円
配偶者の報酬:月額8万円


a.社長の所得税額

給与所得金額:504万円(=42万円×12ヶ月)-154.8万円(給与所得控除)=349.2万円
課税所得金額:349.2万円-38万円(基礎控除)-38万円(配偶者控除)=273.2万円

所得税額:273.2万円×10%-9.75万円=17.57万円

b.配偶者の所得税額

給与所得金額:96万円(=8万円×12ヶ月)-65万円=31万円
課税所得金額:31万円<38万円(基礎控除)

所得税額:0円

(A)、(B)共に配偶者の所得は103万円以下であるため、所得税は0円。
また、(A)、(B)共に配偶者控除を受けることができるため、税額控除額は同額の76万円となりますが、(B)の方が課税所得金額は低くなり、納税額は10万円下がりました。


3.注意点

役員報酬額の適正性について平成9年9月29日に以下の判例が出ました。

(事例)
非常勤の取締役3名に対して支給した役員報酬額は、当該取締役の職務の内容等に照らし不相当に高額であるので、当該取締役の職務の対価として相当であると認められる金額を超える部分の金額は、損金の額に算入することはできないとした事例

すなわち、配偶者の職務内容に対して妥当な役員報酬額を設定しなければ、
妥当な役員報酬額を超える部分については、会社の損金(費用)としては認めないとされました。
この場合、妥当な役員報酬額とは、類似法人において、職務内容が類似する非常勤取締役に対する平均的な役員報酬とされています。

社長と配偶者とで適当な給与配分をすることは、一定の節税効果を発揮しますが、
その際には、配偶者の職務内容を明確化し、類似法人・類似職務内容における平均役員報酬を鑑みて報酬額を決定しましょう。

参考URL:国税不服審判所 公表裁決事例等の紹介(平9.9.29裁決、裁決事例集No.54 306頁)