退職金による節税対策 | アークス総合会計事務所のブログ

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退職金は、不相当に高額なものでない限り原則として法人の損金になります。
また、退職金の受給者個人について退職所得は給与所得に比べ税負担が軽減されています。

そこで、今回のブログでは退職金による節税(優遇税制)について取り上げたいと思います。

1.法人における損金算入時期について

勤続年数などによっては多額の費用が発生し節税効果がありますが、弊社の以前のブログにおける「お金の支出を伴い、税金を減らす節税」に該当するため資金繰りに注意が必要です。

また、退職金の損金算入の時期は以下の通りですので注意が必要です。

(1)役員の場合
原則:株主総会の決議等によりその額が具体的に確定した日の属する事業年度
例外:支払った日の属する事業年度においてその支払った金額を損金経理した場合には、それも認められます
例外:株主総会の決議等の前にその退職給与を支払った場合には、その支払った日の属する事業年度に損金算入が認められる。

(2)使用人の場合
原則:退職の日
例外:実際に退職金が支給された日
例外:就業規則に記載されている支払日
※使用人については具体的な規定はありませんので、債務が確定した退職日が原則的取り扱いになります。

2.損金算入額について

通常の使用人であれば原則、支給額が全額損金算入されます。

一方、役員であれば下記の算式の適正額を超える部分は損金の額に算入される可能性は低くなります。

【役員退職金適正額の算式】
最終月額報酬×勤続年数×比較法人の功績倍率

※功績倍率は実態や業種にもよりますが1.5~3.0が一般的な倍率です

3.受給者個人における優遇税制

退職金であれば個人の所得で考えると退職所得となります。
退職所得は給与所得と比較して所得控除が大きいため税負担がかなり軽減されます。

税率を乗じる前の課税退職所得金額の具体的な計算方法は以下のように計算します。

(退職金 - 退職所得控除額)×1/2=課税退職所得金額

(1)退職所得控除額の計算方法

※勤続年数が5年以下の役員については、上記の算式の2分の1を乗ずることができません。

(2)所得税について

【具体例】
退職金3,000万円、勤続年数25年の場合

・退職所得控除額=800万円+70万円×(25年-20年)=1,150万円
・課税退職所得金額=(3,000万円-1,150万円)×1/2=925万円
・所得税=(925万円×33%-153.6万円)×102.1%)=1,548,346円

(3)住民税について

課税退職所得金額に都道府県民税と市町村民税を合わせて10%を乗じた金額が住民税となります。

上記(2)の具体例では、925万円×10%=92.5万円となります。

上記(2)と(3)より、退職金3,000万円に対して源泉税と住民税を合わせて≒250万円となりますので給与として支給されるよりはかなり優遇されます。

(4)注意点

上記の個人における優遇税制を受けるためには、「退職所得の受給に関する申告書」を退職者から会社に提出する必要があります。

提出がなければ会社は、退職金の20.42%を源泉し受給者本人が確定申告を行うことにより所得税の精算をします。

4.まとめ

退職金は一般的には多額の費用となるため法人の利益は圧縮され、受給者個人の税金面でも優遇措置を受けることができます。

一方、法人としては多額のキャッシュアウトを伴うため資金繰りの準備が必要になります。

また、役員退職金については最終月額報酬を基に適正額を算出するため計画的に準備することも必要になります。

まだ、退職金規定がない法人さまは今回のブログを機に規定の作成のご参考にしていただければ幸いです。