公正取引委員会、消費者庁と財務省は7月25日、消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法(消費税転嫁対策法)の平成25年10月1日の施行前に、事業者の予見可能性を高めること等を目的とした4つのガイドライン案を作成し、これらについてパブリックコメントの募集を始めました。
今回は、4つのガイドラインのうち、公正取引委員会が作成した「消費税の転嫁を阻害する行為等に関する消費税転嫁対策特別措置法,独占禁止法及び下請法上の考え方(案)」の概要をお伝えします。
1.消費税の転嫁拒否等の行為関係について
(1)消費税転嫁対策法
「特定事業者」は「特定供給業者」から受ける商品又は役務の提供に関して、消費税の転嫁拒否等の行為を行うことが禁止されています。
「特定事業者」:大規模小売事業者(一般消費者が日常使用する商品の小売業を行うものであって、その規模が大きいものとして公正取引委員会規則で定められているもの)
「特定供給業者」:特定事業者に継続して商品又は役務を供給する事業者を指します。
(2)独占禁止法
取引上有利な地位にある事業者が取引の相手方に対して下記に記載した行為等を行う場合は、優先的地位の濫用等として独占禁止法に違反するおそれがあります。
1)対価の一方的設定や値引き
取引の相手方に対して消費税率引上げ分の全部又は一部を負担させるため、消費税引上げ前の対価で納入を強要することや一方的に対価を値引きさせること等
2)受領拒否、納期の延期
取引の相手方に対して、消費税率引上げ以後に現状の対価に引上げ分を加算することを申し出た場合にそれを理由としてそれまでに発注した分の受領を拒否すること等
3)不当返品
消費税率引上げ前に仕入れた商品を消費税率引上げ以後の課税仕入分として税額控除の対象とするために返品し、引上げ後に引上げ前と同じ対価で納入させること等
4)支払遅延
対価を消費税率引上げ分加算することを受け入れるが、その代わりに支払期日を守らず遅延すること。
5)協賛金等の負担の要請等
対価を消費税率引上げ分加算することを受け入れるが、その代わりに別途協賛金等の名目で金銭の提供を強要すること等。
(3)下請法
消費税引上げに際し、親事業者が下請事業者に対して、例えば次のような行為を行う場合は下請法に違反します。
1)受領拒否
消費税率引上げ前に仕入れた商品を消費税率引上げ以後の課税仕入分として税額控除の対象とするために、本来は引上げ前であった納期を引上げ後に変更すること等。
2)下請代金の支払遅延
消費税率引上げ前に仕入れた商品を消費税率引上げ以後の課税仕入分として税額控除の対象とするために、引上げ前に納入された商品を引上げ後に納入されたものとして取り扱うことにより、支払期日を遅延すること。
3)不当返品
消費税引上げ前に納入された在庫分を引き上げ後に引き取ると約束して返品すること、また取引先との価格交渉が難航し取引先への納入が順調でないとして返品すること。
4)割引困難な手形の交付
下請代金の額について、消費税率引上げ分価格を引き上げることを受け入れる代わりに、割引を受けることが困難であると認められる手形を発行すること。
5)不当な給付内容の変更及び不当なやり直し
販売時期の延期により、消費税率引き上げ以後の販売となったことに伴い、下請事業者が添付して納品した値札を無償で差替えさせること等。
2.消費税の転嫁及び表示の決定に係る共同行為について
公取委に届け出ることにより独禁法の違反行為から除外される共同行為には、消費税法上の課税事業者や免税事業者に関係なく参加でき、内国事業者か外国事業者のいずれかも問わないとしています。
期間は平成26年4月1日から29年3月31日までの間の商品又は役務の供給を対象とするもので、平成25年10月1日から29年3月31日までの間の共同行為に限るとされています。
参考URL:http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h25/jul/gl_pabukome.html