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食客: 全集3 (西洋古典叢書)/京都大学学術出版会

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ルキアノス全集〈4〉偽預言者アレクサンドロス (西洋古典叢書)/京都大学学術出版会

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今回は、京都大学学術出版会の「西洋古典叢書」の中から、ルキアノス全集第3巻『食客』と第4巻『偽預言者アレクサンドロス』を紹介します。3巻と4巻だけというのはいかにも中途半端ですが、現時点では他の巻は出版されていませんので仕方ありません。全8巻の予定だそうですが、他の巻は今のところ刊行期未定。

作者のルキアノスは、帝政ローマにおけるシリアのサモサタという所で生まれたため、サモサタのルキアノスとも呼ばれています。生没年は定かではありませんが、120年~130年頃の生まれで、180年以降に亡くなったとされています。当時は弁論家として活躍したそうですが、今も名を残しているのは、当然著作のためです。

ルキアノスの著作は、対話形式(戯曲形式)や散文形式(書簡体形式)などで書かれていますが、ジャンルで言えば、諷刺文学となるでしょう。

諷刺文学は、諷刺の対象が地域的、年代的に限定されていることも多く、書かれた場所や時代から離れるにつれ、面白さが分かりづらくなる分野だと思います。しかし、ルキアノスの作品は、比較的分かりやすく、素直に面白いと思える作品が多いのが特徴です。諷刺対象が普遍的なものであることもその理由の一つですが、それよりも状況設定や語り口が面白いのです。

例えば、3巻の冒頭を飾る対話形式の「カロン」では、人が死後に渡らなければならないアケローンの渡し守であるカロンが、死者があまりに死を嘆くので、生前の人の生活を見たくなり、一日だけ暇をもらい、伝令の神ヘルメスとともに人々の生活を見て回るというもの。結論は見えていると思いますが、いつも死者ばかり見ているカロンが生きている人々の生活を見に来るという設定がいい。

残念ながら今回紹介する巻には所収されていませんが、月面旅行に行く「本当の話」(ちくま文庫『本当の話』所収)などもあり、ルキアノスには発想だけで読者を惹きつける力があります。

諷刺対象として頻繁に槍玉に挙げられるのは、哲学者(ソフィスト)。正確には似非哲学者というべきでしょうけど、要するに、中途半端な知識で人を責めたり優越感に浸ったりするくせに、自分は物欲や金銭に塗れた生活を送る輩が格好の餌食になります。こういう輩がとにかく嫌いなのですよ、ルキアノスは。

『さて、人間の屑よ、とくに哲学者と自称する者に対して私はそう呼ぶだろう(4巻P38)』

この種の作品には、3巻に所収されている「哲学諸派の競売」とその続編「甦って来た哲学者」や、3巻の表題作の「食客」、4巻に所収されている「お傭い教師」などが挙げられるでしょう。

また、非論理的な風習や魔法そして都市伝説などを信じる者や虚言する者もルキアノスの敵です。3巻の「供儀について」、「嘘好き人間」、4巻の「哀悼について」などでは、そんな人間を批判というか馬鹿にしています。

ただし、「嘘好き人間」はルキアノスの主旨に反して、嘘話自体が非常に面白く、ゲーテはこの話からあの有名な「魔法使いの弟子」を書き上げたほど。注目作の一つでしょう。

その他にも、個人的にあまりに痛いところを付いてくる「無学なくせにやたらと本を買い込む輩に(3巻)」、トロイア戦争の発端となったパリスの審判を題材に人の欲望を面白おかしく描いた「女神たちの審判(4巻)」、アープレーイユスの『黄金の驢馬』の要約的作品「ルキオスまたはロバ(4巻)」、ルキアノスと同時代に実存した偽予言者=詐欺師であるアレクサンドロスの伝記「偽預言者アレクサンドロス」など幅広い作品が所収されていて、ルキアノスの多才さが楽しめます。「ルキオスまたはロバ」は偽作の疑いもあるようですが・・・

いささか口の悪いルキアノスですが、納得できることも多く言っているし、ユーモアもあるしで楽しめます。時折、自分のことを言われ、ルキアノスの意地の悪い言葉が胸に突き刺さることもありますが(笑)、まあ、それも本書の良さの一つでしょう。

【関連本】
本当の話―ルキアノス短篇集 (ちくま文庫)/筑摩書房

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