二分間の冒険(偕成社文庫):岡田淳 | 夜の旅と朝の夢

夜の旅と朝の夢

~本を紹介するブログ~

二分間の冒険 (偕成社文庫)/偕成社

¥756
Amazon.co.jp

今回は、児童文学の叢書として岩波少年文庫と双璧をなす偕成社文庫の中から、岡田淳の『二分間の冒険』を紹介します。この本は、以前てらこやさんの「てらこやのどんとこい読書」で紹介され、さらに立宮さんの「文学どうでしょう」で紹介されていました。

私が読書に目覚めたのは中学生のときで、児童文学に関心が向く年齢は既に過ぎていました。そのため、子供時代に児童文学を読んだ記憶はありません。ある程度の年齢になってから、児童文学も有名な作品は読んでおきたいと思い立って、少しずつ読んでみてはいるのですが、まだ読んでいない有名作品が山のようにあります。特に日本の児童文学については、ほとんど手つかず。本書を足がかりに今度は日本の児童文学も読んでいけたらいいなと思っています。

さて『二分間の冒険』は、1985年に出版された作品ですが、書店の児童文学コーナーでは、今でも目立つ位置に並んでいたり、平積みになっていたりしています。発表から30年近くたったにも関わらず、人気が高いことを表しているわけですが、読んでみると、納得。これは面白い。

体育館で翌日の映画会の準備をしていた6年3組の子供たち。悟は、単調な準備作業に嫌気がさし、適当な口実を見つけて保健室へと向かうことに。その途中、頭の中に直接声が聞こえるのだった。

その声の主は、近くにいる黒ネコで、見えないとげを抜いてくれと奇妙なお願いをしてくる。悟は、納得いかないまま、見えないとげを抜くふりをすると、黒ネコは代わりに望みを1つ叶えてやろうと言いだす。

自分の望みについて悩む悟だったが、黒ネコに対して「ちょっとまってくれよ」と言ったばかりに、黒ネコはお前の望み通りに時間をやろうと言うのであった。すると突然、悟は見知らぬ森の中にいる自分に気づく。

黒ネコは姿を消していて、声だけが聞こえてくる。黒ネコは、自分にふれて「つかまえた」と叫べば、元の世界に帰してやると約束する。そしてヒントとして、この世界で「いちばんたしかなもの」に姿を変えていることを悟に教える。

「いちばんたしかなもの」が分からないまま、悟はとぼとぼと歩いていると、6年3組の友達たちが集まる広場に出る。しかし、彼らは顔と名前は同じなのだが、別人らしく悟のことを誰も知らない。

そこで色々話をするわけだが、結局、友達の一人であるかおりと一緒に竜のいけにえになるため、竜の館に向かうことになってしまう。しかし、途中で出会った老人から、竜を倒すことができる剣を譲り受け、悟とかおりは竜退治を誓うのであった。

とまあ、おおざっぱにいえば、そんなストーリー。その後は、竜退治という異世界の中の物語と、黒ネコが化けている「いちばんたしかなもの」を探すという現実世界と異世界とをつなぐ物語とが混然一体となって展開していきます。

ストーリーも面白いですが、大人視点に立つと、人語を解する動物、願い事を叶えるという約束、異世界への移行、なぞかけ、竜退治など、ファンタジーや民話でみられる王道の要素を組み合わせつつ、それらの要素を少しだけ王道とは異なる使い方をしているところも見どころになるのではないでしょうか。

自分が読んでもよし、お子さんに読ませてもよしですので、書店などで見かけたら手にとってみてください。きっと興味がそそられると思いますよ。

ちなみに大型本もあります。
二分間の冒険 (偕成社の創作)/偕成社

¥1,512
Amazon.co.jp