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【18世紀イギリス文学を読む】
第12回:『トム・ジョウンズ』
今回は、ヘンリー・フィールディング(1707-1754)の『トム・ジョウンズ』(1749年出版)を紹介します。全部で4巻ありますが、上には1巻目だけ貼っておきます。
このブログでは、フィールディングの小説として、『ジョウゼフ・アンドルーズ』と『この世からあの世への旅』を紹介したことがありますが、フィールディングの代表作といえば、世間的には本書『トム・ジョウンズ』ということになっています。
サマセット・モームが『世界の十大小説』の中でも取り上げていますね。僕はこれでようやく『世界の十大小説』で紹介されている小説を全て読んだことになります。といっても、『世界の十大小説』自体は読んだことないんですけど・・・
さて本書は、一口に言えば傑作です。すごく面白い。雰囲気やストーリーは『ジョウゼフ・アンドルーズ』にかなり近い印象を受けますが、完成度としてはこちらの方が上でしょう。
語り口は軽妙洒脱で、電車の中で読んでいて顔がニヤけてしまうこともしばしばありました(笑)。あと、全18巻の各巻の最初の章には、必ず作者が出てきて、小説とは独立したユーモアのあるエッセイを披露するのですが、これがいい味を出しています。それ以外の箇所でも、いわば狂言回し的に作者が顔をだし、あの手この手で読者を楽しませてくれます。
18世紀イギリス文学なんていうと、眉間に皺を寄せて読むものだと思っている方も多いかもしれませんが、そんなことは全くないです。難しいことなんて考えず、素直に読めば絶対に気に入っていただけると思います。
莫大な財産を相続した善良な地主オールワージが所用で赴いていたロンドンから家に戻り、寝ようとすると、なんと身に覚えのない赤ん坊がベッドの上で安らかに眠っていた。驚くオールワージであったが、持ち前の善良さを発揮し、赤ん坊を丁寧に扱うことに。
赤ん坊の母親は、ジェニー・ジョウンズという以前オールワージ家で働いていた女中で、彼女がとある男性と婚前交渉の末に産んだ子供であることが発覚する。
オールワージは、ジェニーに別の土地でやり直させるために費用を出して送り出し、赤ん坊を自分の家で育てることにした。そしてその赤ん坊はトム・ジョウンズと名付けられることになる。
トム・ジョウンズはオールワージに実の子供のように育てられ、ちょっと悪さをしてしまうが根は善良な好青年に成長する。そんなトム・ジョウンズは、ソフィアという女性に恋をするのだが・・・
その後は、トムとソフィアの恋愛を基軸とした波乱万丈な物語な展開されていきます。
人物が大勢登場するのですが、彼らがそれぞれ個性的で、思惑や立場の違いから様々な問題を起こしていきます。しかも「しばしば起こりもしないことを予見し・・・しばしば真実以上のものをしきりに見抜く(3巻48頁)」もんだから、もう話がややこしく展開していく。それが最後にはきちんと収束していく様は読んでいて圧巻でした。
ということで、かなりのおすすめ。4巻もあるので手が出にくいかもしれませんが、多くの人に読んでもらいたい傑作です。
2巻目以降。
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