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今回もゲーテの作品の中から『タッソオ』を紹介します。『タッソオ』は、『ファウスト』と同じように、韻文で書かれた戯曲です。
本書では、韻文のリズムを活かした詩文体で訳されていますが、少し古い翻訳です。歴史的仮名遣いではないのですが、旧漢字が使用されています。そして、振り仮名は全く付いていませんので、ちょっと読みづらい。まあ、なんとかなりますが、旧漢字が苦手な方は他の翻訳の方がいいかもしれません。
さて、タイトルの「タッソオ」とは、実在したイタリアの詩人トルクァート・タッソオ(1544-1595)のことです。ちなみに、本書では、訳が古いので「タッソオ」と表記されていますが、普通は「タッソー」または「タッソ」と表記されています。
タッソオはゲーテより約200年前を生きた偉大なる先人で、代表作は牧歌劇『アミンタ』と叙事詩『エルサレム解放』。両方とも岩波文庫から出ています。『エルサレム解放』の方は抄訳ですが・・・。
そんな詩人タッソオを主人公にしてゲーテは何を語ろうとしたのか、そこが本書の見どころでしょう。登場人物は少ないですし、筋も単純なのですが、かなり奥深い作品だと思います。
フェラアラの公爵アルフォンス二世の庇護の下で暮らしていたタッソオが、その公爵に、公爵の妹である公女、公爵の親戚のレオノオレ伯爵夫人がいる場所で、出来たばかりの詩を捧げるところから始まります。
そこに公国の大臣であるアントニオが帰還します。このアントニオというのが、タッソオとは真逆の人物。タッソオが夢想家で子供じみているのに対して、アントニオというのが実務的で堅実な人間。学問も芸術、実益があって初めて意味があると考えるような人間です。
そんなアントニオとタッソオは犬猿の仲。公女は、そんな二人を友達にしたくて、タッソオにアントニオと話をするように勧めます。しぶしぶ了承したタッソオはアントニオと会話するのですが、この二人の相反する考えが浮き彫りになるばかり。そして、アントニオの言葉を侮辱ととったタッソオは剣を抜いてしまい・・・
ゲーテは芸術家ですからタッソオに同情しそうですが、そうでもなく、アントニオとタッソオとが調和した人格を理想としているように私には思えましたが、どうでしょうか?
以下、関連本。
タッソ エルサレム解放 (岩波文庫)/トルクァート・タッソ
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愛神の戯れ――牧神劇『アミンタ』 (岩波文庫)/トルクァート・タッソ
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