普段は物静かなウチの前の往来も、この時期ばかりは早朝から賑やか。日曜日ともなれば、平日は会社勤めのにわか百姓たちで溢れている。
もちろん自分もその中の1人なのだが。
父は昨日、隣の田んぼのおじいさんとケンカをしたそう。
田んぼへ水を引く農業用水路の水取り口を勝手に閉められて、田んぼに水が回らなかったので文句を言ったら、言い返されてケンカになったそうだ。
まあそういうのもたまには脳の刺激になっていいのかも知れないけれど、老人同士で何をやっているんだか。
あぜ道に出てのろのろと準備を進めていると、妻と娘が田植えに参戦。
遊び半分で来ているのは見え見えだが、遊び半分でも田んぼに行こうという感覚が素晴らしい。
と思っていたら、「長靴が抜けない」とか散々わちゃわちゃやった挙句、早々に引き上げていった。
田植え機は父が担当。
「いつまでもお父さんに甘えていたらダメだ」
とか
「運転を代わってやれ」
などと通りがかりの人に説教される。
いちいち説明するのも面倒なので、
「そうですね」
「がんばりまーす」
などと適当な返事でお茶を濁すのも、毎年恒例のやり取りになってしまった。
ちなみに今年は2018年に生まれた新銘柄「星空舞」を栽培。
近年はお米戦国時代とも言われるほど新銘柄が乱立しているが、星空舞は現在ほとんど栽培されなくなったかつての名銘「ササニシキ」の流れをくむ品種らしい。
昨年まで栽培していた「きぬむすめ」も食味のいい米だったが、星空舞がどんな米に仕上がるのか、収穫が楽しみだ。
夕刻、薄暗くなってきた農道で田植え機の洗車をしていると、隣のおじいさんがひょっこり現れて、
「昨日は勝手なことをしてすいませんでした」
と、父に頭を下げられる。
すかさず父も、
「いやいや、こちらこそ言い過ぎてしまって...」
と頭を下げ、それからしばし農業談義。
こういう時は下手に口出しせず、放っておくに限る。
オレはそのまま2人を残し、清々しい気分に包まれながら帰路に着いた。

