扉を開けると、近くの電気工場へ働きに来ているタイ人の女の子2人が立っていた。
「これ、じいちゃんに。」
と、提げていた3段包みを差し出す。
すっかり恒例になった手作りタイ料理の差し入れが届いたのだ。
じいちゃんと彼女たちとの関係については過去ブログを。
外出中の父に代わり、それを受け取りながら、
「これは何ですか?」
と、ゆっくりした口調で問うと、
「これは、もち米、卵焼き、マンゴーです。全部混ぜて食べます。美味しいか?」
「まだ食べていません。」
「これはご飯ですか?お菓子ですか?」
「これはもち米、卵、マンゴー。」
「それは知っています。」
微妙に噛み合っていないのだが、彼女たちの日本語は随分上達した。
数ヶ月前まではこんな会話すら困難だったのだから。
お礼を言って室内に戻る。
物好きな母が興味深そうに覗き込んできた。
それにしても米とマンゴーと卵焼きを一緒に食べるって、一体どういう料理なんだろうか。味の想像が全く出来ない。
開封すると独特のココナッツミルク臭と甘い香りに包まれた。
疑心暗鬼な面持ちで、言われた通り1段ずつ開けては皿に移し、軽く混ぜ合わせていく。
盛り付け的に正しいかどうかも謎だが、得体の知れないものが出来上がってしまった。
放心していると妻登場。
この状況を説明すると、
「日本人だって、苺大福や桜餅なんかでは米を果物や甘いものと合わせて食べるでしょう。きっとそんなに馴染みのない味じゃないと思うよ。」
と、秀逸なコメントを披露する。
それでようやく食べてみる気になった。
お昼時だったので家族も集い、一口ずつ試食。
「不思議な味。でも美味しい!」
「卵は甘いけど、ご飯は塩味だね」
「オレはマンゴーだけでいい」
「それじゃこの料理の意味が...」
「料理というかお菓子だな、これは」
「と言いながら、ラーメンと一緒に食べるか?」
等、口々に感想を述べながら賑やかな食事をした。
調べたところ、これは「カオニャオ・マムアン」というタイを代表する伝統的なスイーツとのこと。
ネットで見た盛り付け例はどれも涼やかで美味しそうだったが、オレが仕上げたものは...。
タイの彼女たちは、いつもこうして家族に団欒の時を与えてくれる。
むろんじいちゃんの農業指導(?)に対するお礼という意味もあるのだとは思うけれども、それ以上のものを頂いているような気持ちになっていることは確かだ。
本来ならば来週の日曜に予定されていた地元の祭りにお招きする心づもりだったのだが、コロナ自粛の影響で祭り自体が中止となってしまった。
この気持ちに報いるために自分は何ができるのか、彼女らが母国に帰ってしまうまでに考えておきたいと思う。

