3月9日:追記
以下の記事は2月4日に投稿したものですが、その後の研究で中高生には明らかに別のパラメータを用意せねばならないという確信に至りました。現在までに必要であると感じているのは、まず中高生になると「他人の目を気にする」というのが非常に重要な精神形成、行動形成の要素になるので、他人の目をどの程度気にしているか、あるいは他人の目を気にして自分を粉飾している程度がどの程度かを測るパラメータです。ただしこのパラメータは自尊心と似通った性質をもち、あるいは自尊心の項目に含めても良いかも知れません。正し粉飾傾向は早く見抜かないと指導を誤ります。自尊心のみでは粉飾は起こりません。
また、青年期独特の万能感と無力感との往復がどれほど激しいかについてのパラメータが必要かも知れません。
より多くの事例に当たって研究する必要があります。
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この記事、
旧Blogで一度記事にしたのですが、その後パラメーターを拡充したので、全面改定の上、再掲載です。これは私が家庭教師をする上で、子供の能力を分析するために作った分析項目で、この項目に沿って子供の性質を分析していくと、弱点と課題が見えてくる、というわけです。本当は客観的な数値を入れていけば自動的にその子の能力バランスが分かるようなシステムを作りたいのですが、今の私にはこれが精一杯です。また、一応社会人から小学生までの指導経験や、自分自身についての内省も踏まえ、全年齢対応の分析項目を設計すべく努力しているのですが、小学生を指導しながら作ってきたので、どちらかといえば小学生向けの内容になっているような気がしています。
まぁ、能書きはともかくとして、まずはご紹介しましょう。
<精神面>
・克己心
・自信
・自尊心
・独立心
・向上心
・探求心
・問題意識
・集中力
・バランス
・現実感覚
<知性面>
・読解力
・語彙力
・暗記力
・知識力
・発想力
・視覚把握力
・法則運用力
・順序分析力
・情報抽出力
・統合力
・心理洞察力
読んでも、いまひとつ分かりませんね。少し詳しく説明を試みます。
・克己心
自分に打ち勝つ力。我慢強さですね。これを身に付けさせるためには、子供を厳しく追い込むのも良いのですが、教育者自身が自分に厳しく生きていなければ、本当に説得力を持って克己心の大切さを実感させることは出来ません。
・自信
読んで字の如くです。人間は自信を無くすと、学習能力も問題解決能力も大きく低下します。勉強するときも、テストに臨むときも、自信は非常に重要な要素です。
自信を失った子に自信を取り戻させるのは大変な作業です。時間がかかります。しかし、不可能ではありません。方針は二つあって、一つは「成功体験を積ませる」つまり「正解できた!」という経験をたくさん積ませることです。しかし、これなら正解できるだろうと思って与えた問題が出来ず、逆に自信を崩してしまうことも往々にしてあります。そこで二つ目の方針ですが、「無根拠でも良いから『君はデキル!デキル!デキル~~!!!』と言いまくる」という方法があります。出鱈目なように思われるかも知れませんが、実際は人間の考えなんて曖昧なものなので、年がら年中「君は力はあるから」なんて話を聞かされ続けていると、そのうち暗示にかかってしまうものです。
・自尊心
自信とどう違うの? と思う方もいらっしゃるかも知れませんが、「俺はエライ」と思いつつも、実は自信のない人って、いるでしょう。自信と自尊心の違いは、そういうことです。
自尊心は自分に関する美学です。「自分はこうでなければならない・ああであってはいけない」という内容が、自尊心には含まれます。従って「自分が悪い成績をとる事は許せない」という形で自尊心に火がつけば、これは強い。ただし、「自信」の場合はありさえすればパフォーマンス向上につながる面があるのに対し、「自尊心」は、周囲から認められている人が持っていればプラスに働きますが、周囲から認められていない人の自尊心はしばしば反社会性の芽になるので危険な要素でもあります。例えば社内での評価の高いサラリーマンの自尊心は「俺はどんどん仕事をこなしていくんだ!」といった形になるでしょうが、社内で評価されていない人は「会社の人間なんかどいつもこいつもクソ喰らえだ。会社の犬になんかなってたまるか」といった感覚につながる。
あればエネルギーになる。しかし扱いに失敗すると暴発する。それが自尊心です。自尊心は、あったらうまく使いこなす。無かったら無いで、別に構わない、という類のものです。極端に欠けている場合には、無節操な人間の例を一つあげて、自尊心のない人間というのはああいうものだ、と言ってやれば、「ああはなりたくないな」と自尊心が芽生えることもあります。「自尊心が極端に欠けている子」というのは、実は「周囲から認められていないために反社会性に転化してしまった自尊心の持ち主」だったりもします。
・独立心
これも自尊心と似ていると感じる方がいらっしゃるかも知れませんが、自尊心は強いけれど依存度の高い人というのもいます。
独立心が低い子供は、周囲、特に親御さんの影響を強く受けます。というと親御さんが「勉強しなさい」と言えば素直に従うと考えるかも知れませんが、実際には依存心・甘えはしばしば反抗心という形を取ります。つまり親御さんが「勉強しなさい」と言うと、その影響を受けて気分を害し、逆に勉強する気を喪失したりします。
親御さんに言われなければ勉強できない、というようでは、もはや好成績は望めません。従って独立心は極めて重要な要素であると言えます。しかし、これは子供だけの問題ではありません。親御さんが子供に干渉するから、子供はその干渉に頼って独立心を失うのです。そして子供が独立心を身に付けたとき、親御さんが子離れできていないと、親御さんは寂しい思いをしなければならなくなります。これは親子共通の課題であることを忘れないで下さい。
独立心の欠けた子への対処は、その子が親や周囲に依存していることを指摘するだけで事足りる場合が多いです。だれでも「君はまだガキだな」と言われたら嫌だと思うものです。ただし、指摘の仕方を注意しないと、子供に一気に嫌われて教育者としての影響力を喪失する恐れもあるのでご用心。なお、親への反抗が独立だと勘違いする子もいるので、その点は戒めます。本当に独立心旺盛な子は、親御さんの言葉に対して過剰に感情的に反応したりはしません。
・向上心
今よりも良くなろう、という気持ちです。今のままでいいや、と思っている子に、何かの改善は望めません。
これが欠けている場合、ダラダラしたタイプなら世間の厳しさをガツンと思い知らせてやることで改善が望めます。本や映像、実体験など、刺激が強いものを与える必要があるでしょう。NHK「映像の世紀」のアウシュビッツやソ連シベリア抑留の映像など、「何かをしなければ!」という気持ちを起こさせる効果があるかも知れません。
・探求心
対象と自己との2方向があります。対象への探求心があれば、学びが深くなり、自ら解法を模索したり出来ます。自己への探求心は、自分の弱点と長所を知り、自分を修正したり、勝負時のための戦略を立てたりするのに役立ちます。
探求心が欠けていると、他の能力が空回りする、という危険性があります。克己心があっても無駄な努力に時間を費やしてしまったり、自信は慢心に変わり、自尊心は高慢に、独立心は無根拠な反抗心に、向上心は単なる「夢見がちな性格」に、すべて堕落してしまいます。
探求心に欠ける子への対策は、とにかく考える習慣を付けさせること、思いもよらぬ事が世の中には存在するのだと教えることなどが考えられますが、比較的難しいように思います。具体的な対策としては、作文で考えをまとめさせたり、読書をさせたりしています。
対象への探求心はあるのに自己への探求心が欠けている子もいますから、そういう場合は「もっと自分自身についても考えてごらん」と示唆すると良いでしょう。対象を探究できる子は、自己もそれなりに探究できます。
・問題意識
このままではいけない、という意識です。小学生にはあまり求められませんが、高校生以降では勉強の大きなモチベーションになります。社会問題や人間の奥深さ、難しさ、悲劇性といった事柄についての知識を与えることが対策となります。基本的には読者と社会科の勉強が対策となります。
・集中力
分かりやすいですね(笑)
集中力のない子については、自信の有無や健康上の問題の有無を確認します。それが特に見あたらなければ、あとは、ひたすら言い聞かせるしかないでしょう……改善の難しい項目です。その場合、本人に「集中力を身に付けよう!」という強い意志がなければ改善は望めません。従って、前提として克己心や独立心が求められます。これらの項目が低い場合は、そちらから改善していく必要があるでしょう。この項目を有意に改善させることが出来るようになるのは、高校生以降ではないでしょうか……
なお、スポーツやゲームが好きな子には、スポーツやゲームに熱中している状態を例にして「要するに集中するとはどういう状態なのか」を教えてやることは、場合によっては有効かも知れません。
・バランス
最近あらたに立てた項目です。ちょっと、まだうまく説明できません。
・現実感覚
探求心と似た項目なのですが、要するにどこまで現実的に物事を考えられるか、です。これも最近立てた項目で、ちょっとまだうまく説明できません。
<知性面>
・読解力
文章を読んで話の流れを理解する能力です。が、他の項目との差異に注目してください。国語の成績を単純に語彙力と読解力に分けるのは、いかがなものかと思います。
・語彙力
知っている単語の数です。語彙力の問題、というと、しばしば漢字の書き取り問題や語の意味を答えさせる問題だけが語彙の問題だと勘違いする人がいますが、それは間違いです。小学生の場合、知らない言葉の意味を逆に取ってしまったために選択肢を間違う、といった間違い方があり得るので、話の流れは分かっているらしいのに明らかにおかしい選択肢を選んでいたら、語彙の問題を疑う必要があります。年が上がるとそこまで極端な例は少なくなりますが、単語のだいたいの意味は知っていても、ニュアンスが分かっていない、という事は中高生でも少なくありません。それで足をすくわれることは、ままあります。
ちなみに、単語は国語辞典で調べるだけでは不十分で、実際の使用環境におけるニュアンスを大人が教えてやる必要があります。例えば「人相」という語を国語辞典で調べると「人の顔つき。特に、心の内面を表した顔つき」などと説明が載っていますが、「人相」と言えば9割方は悪い人相の話です。こういうニュアンスが、国語辞典からでは意外と分からないので注意が必要です。国語辞典さえ与えておけば事足りる、というのは間違いです。
語彙力は、基本的には御家族との会話のなかで培われるとお考え下さい。もちろん、これが問題だとなったら家庭教師としてできる限りのフォローをすることになりますが、基本的に暗記物は時間をかけるしか打つ手が無く、家庭での努力が重要です。
・暗記力
そのままですね(笑)暗記の速度、正確さ、保ちの良さを見ます。鍛えると言ってもなかなか難しいので、暗記力のない子は、そのぶん時間をかけるより他ありません。
・知識力
語彙力や暗記力とどう違うのか、と疑問に思われるかも知れません。語彙力は単語に関する知識の量で、暗記力とはこれから知識を増やしていく能力ですが、知識力とは事柄に関する既に得た知識のことで、たとえば「小学生だけど物質が分子や原子から出来ているのを知っている」「高校生物で習う前から遺伝子やDNAといった概念を知っている」「小学校で日本史を勉強する前から、あるいは中学で世界史を学ぶ前から、日本史や世界史を一通り知っている」といった能力です。あるいは英語でも、英文が良く分からないのに「ああ、あれの話か」と文章内容について察しがついてしまったり、国語でも文章内容に気を散らされずに問題に取り組めるなど、いわゆる「暗記分野」以外でもジワリジワリと効いてくる力です。数学だって、なんとなく複雑な解法を知っていれば、知識は力になります。ただし、語彙力と同じで普段の御家庭の努力に大きく左右される部分です。
・発想力
この後でご説明します「視覚把握力」や「順序分析力」と混同されがちですが、私は別の能力だと思います。基本的には理数系の問題に要求される能力で、「理詰めでは出せない解法を発案する」能力です。
発想力、というのは曖昧で一体何なのかはっきりせず、そのために「発想力が足りない、頭が固い」と思っても、どうしたらいいか分からない人が多いでしょう。しかし、発想力といっても、全くの無からアイディアを産み出すことなど誰にも不可能で、だいたい「発想力がある」ように見える子は、少ないヒントを敏感に見つけだしているものです。発想がなかなか出てこない子でも、他の能力によって、理詰めでギリギリまで攻めて、「だいたいこの手の問題はこのあたりにヒントがある」という知識を応用することで、発想力を補うことが出来ます。
なお、発想力自体を強化するためには、自信を持って自由に思考を展開できるようでなければならず、間違うことを恐れていては豊かな発想力は期待できません。発想力の基礎は自信です。
ええっと、そろそろ記事を書くのが疲れてきました……
・視覚把握力
低年齢で差が大きく、物を言う能力です。問題内容を視覚的に把握する能力。典型的なのは算数の文章題で図を扱う能力ですが、計算にも応用できたりします。
・法則運用力
理数科目では、法則や公式、解法を厳格に適用せねばならず、プラスとマイナスを一つ間違えただけで点がまったく失われてしまいます。しかし、日常ではここまで厳格に従うことが要求されるルールというものは滅多に無いため、受験勉強を始めたばかりの小学生にはなかなかその感覚が掴めないという事があります。高学年での法則運用力は、性格に法則に当てはめるという発想がない、というよりは、その法則を感覚的に使いこなせるほど身に付いていないことが問題となります。(低年齢のそれと高年齢におけるそれは、別の項目として分けた方がいいのかも知れません)
・順序分析力
複数の段階をふむ問題(たとえば食塩水に水を足し、食塩を足し、半分にし、蒸発させ、といった多くの操作を重ねていくタイプの問題)で、その順序をきちんと追える能力。あるいは自分で順序を組み立てる思考能力。低年齢ではもちろん、高年齢でも弱い人が多い。コツは「問題を部分毎に切り分けて、問題とする部分以外は固定して、問題とする部分のみを思考の対象とする」この弁別、切り分けをきちんと出来るかどうかです。
・情報抽出力
問題文中から解答に必要な能力を抽出する能力、ですね。問題のどこに着目したらいいのか、解答のどの段階でどの情報を用いたらいいのか。解答中に傍らで見ていると、(ほらほら君が求めたがっている辺ABの長さは問題文に書いてあるよ~)なんて事が、小学生ではしばしばあります。問題の全体像が見えていないことが、関係しているのかも知れません。
・統合力
考えをまとめる能力。作文が書けない子は、これが欠けている事を疑います。逆に言えば作文が出来ない子は自分の考えをまとめることが出来ない子である可能性がある、という事でもあります。考えをまとめられないと、どうしても感情的な方向に流れてしまう事になり、対人関係に支障をきたす恐れもあるので、底上げは欠かせません。
・心理洞察力
小説の登場人物の気持ちを理解する能力は、読解力とは別の能力です。話の流れが分かっていても、気持ちは理解できない、ということが有り得ます。また出題者の意図がどの辺りにあるのか、出題者の意図を読み取ることも、必要な能力です。
……すみません、最後の方は説明が明らかにいい加減です……
各能力は5段階(普通・良い・大変良く武器になる・悪い・大変悪く対策が必要である)で評価します。今後も研究を重ねて、より確実に子供の能力の「穴」を発見できる分析ツールを構築していくつもりです。いまは年齢によって、項目を変える必要もあるかも知れない、と考えています。
重要なのは、このようにして子供の能力を分析してみると、成績が悪い子には必ず致命的に欠けている能力があるということです。一方で必ずひとつくらいは良い能力を持っていたりするもので、何も持っていない子というのは、まず存在しません。子供の成績を上げたいという時に、ただ闇雲に勉強させることには、私は反対です。叱りとばすのも、なだめすかすのも反対です。成績が良くない子には、良くない理由がある。その理由をきちんと見つけだし、解決してあげなければ、いくら勉強をしても、なかなか成績は上がらず、かえって「自分は出来ないんだ」と思い込んでしまったり、間違いやすい癖を身に付けてしまったりする恐れがある。
勉強を教えるとき、多くの先生や親御さんはテストのできなかった問題には注目しても、そのできないメカニズムや、そこから読みとれる子供の能力のアンバランスなどに想いを馳せる事は少ないように思います。精神面についても、多少意識を払う人はいるでしょうが、側面的な問題と捉えて重視しなかったり、対策の立てようのない問題と考えて放置したりというパターンが多いように思います。しかし、好成績を収めるには様々な能力を複合的に活用する必要があり、成績不審も足りない能力をひとつトレーニングしてやることで、一気に解決する場合もあるのです。そのための見立てと対策を、私は重視します。
重視するのは良いんですが、いっぺんに書き過ぎて頭痛いです……