今更にも程があるくらい
激しく今更ですが
吉本ばななさんの
「キッチン」を読みました
この本が大ベストセラーに
なっていた頃
猫も杓子も吉本ばなな、
吉本ばななの風潮に辟易して
なんとなく避けていたのですが
あれから月日は流れ
吉本ばななさんの
インタビューをたまたま目にして
当時若くして
売れっ子作家となったため
取材を受けても次回作より
お金のことばかり尋ねられ
色々な重圧が重なって
いつも半病人みたいだった
という話を聞いて
そうだったのかと思ったら
急に興味が湧いて
読んでみたくなったのです
唯一の肉親だった祖母を亡くし
天涯孤独の身の上となった
大学生・桜井みかげは
祖母が常連客だった
花屋のアルバイトで
同じ大学に通う
田辺雄一の家に
居候することになります
雄一は母親のえり子と
二人暮らしでしたが
えり子は母親ではなく
実は父親(元男性)で
ゲイバーを経営しており
彼らとの交流を通して
祖母の死から徐々に
立ち直っていくみかげ
しかし客とのトラブルで
えり子が殺害され
雄一はショックのあまり
行方をくらましてしまいます
ある日突然大切な人を失い
独りぼっちになる
同じ境遇に立たされた
みかげと雄一の心の交流が
最後まで淡々と描かれます
決して明るい話ではないのに
あまり悲愴感がないのは
どこかふわっとした
文章と静かな視点の
せいかもしれません
世の中が完全に浮かれきった
あのチャラいバブル時代に
「キッチン」のような
ある意味地味な小説が
受け入れられたことが
今思うと不思議で
仕方ないのですが
やっぱりどこかおかしいと
本当はみんな薄々気付いて
いたのではと思います
どんなに辛く悲しくても
それでも人は生きて
行かなければならないし
少しづつでもいいから
前を向いて進んで行こう
そして毎日を
大切に生きて行こう
そんなふうに思わせてくれる
これからもずっと色褪せない
この先も折に触れて
読み返したくなる一冊です