※ネタバレか否かは、読者の自己責任なので、あしからず 


 シネマ#67


 『おさるのベン』


 in TSUTAYA 


 監督/ヨハネス・ロバーツ 


 出演/ジョニー・セコイヤ●ジア・ハンター●ビクトリア・ワイアント●トロイ・コッツァーetc 


 2026年●米国






 採点/80点 



 休日を活用し、見逃していた話題作をTSUTAYAへ散策すると、新作棚に今作がリリースされているのを発見。

ホラーは苦手だが、ラジオで宇多丸氏のシネマ批評コーナーで紹介されて以来、ずっと気になっていたので、手に取った次第だ。




ハワイの自宅に友人達と共に久々に帰ってきた女子大生ルーシーが、長年家族の一員として可愛がってきたチンパンジー・ベンの様子がおかしい事に気付く。



彼は。狂犬病に感染していたのだ。

急激に狂暴化し、次々と仲間に襲いかかり、惨殺する殺人モンスターに豹変し、彼女達は、地下のプールに閉じ込められてしまう。

出口の無い居室に監禁され、連絡手段も遮断、絶望視する中、決死の脱出を試みるパニックホラー。

狂犬病に冒されたペットが狂暴化し、ひ弱な人間達に容赦無く牙を剥く地獄絵図は、幼稚園の頃、なぜか、ゴジラとよりにも寄って併映されていて、トラウマに陥ったスティーブン・キングの傑作
『クジョー』
を思い出す。

其れは、巨大なセントバーナードだったのに対し、今回の狩人は、小柄なチンパンジーと云うのが大きなポイント。

俊敏で尚且つ頭が良く道具や部屋の暗闇を巧みに利用し、ルーシー一向に対し趣向を凝らした血祭りを上げてゆく迫力は、陳腐な殺し屋よりも用意周到にトラップを仕掛けており、予期せぬ奇襲作に驚き、息を呑む面白さだった。

狂犬病の感染者は、とても水を恐れるため、皆、プール内に避難されると、手が出せない。



唯一の安全地帯に逃げ込まれ、当初は、苛立っているみたいだが、スマホや車のキー等のアイテムを巧みに操り、おびき出し、ハシャぎながら血飛沫を浴びる熱狂ぶりは、殺人ゲームを完全に楽しんでいる姿に見え、恐怖心が興味深く疾走しており、90分にコンパクトにまとめ上げられた修羅場のドン底を味わえた。

最近の国内ニュースに接していると、
「熊よりは大丈夫やろ」
と笑いたくなるが、チンパンジーが突然、飼い主を襲い、瀕死の重傷を負わせる、もしくは、殺害するケースは、意外と多い。

最も悪名高いのが、2008年に実際な起きたトラビス事件であり、今作は、其の惨劇をモデルに創作の基礎を築いたと云われている。

日本国内でも、かの『志村どうぶつ園』のレギュラーとして親しまれていたチンパンジーのパン君のも例外ではなく、育つ過程でナーバスになり、苛立った末、暴れて人に危害を加えたトラブルは、詳細に関して、未だタブーとなって久しい。

故に、無防備に近付いた仲間や、途中で訪ねてくる男友達etc当初、
「カンベンしろよ・・・」
って、油断している者に、罠をハメて、畳み掛けて血肉をエグり、骨まで剥ぎ取る残忍なやり口は、手際の良さを含めて、身の毛がよだつ悪寒が加速してしまった。

キチンと凶器を使い分ける器用さがシャレにならない悪戯の域を貫通した悲劇を物語ッている。

恐竜やプレデターーのようなモンスターではなく、ヒト科に近い殺人鬼で描いていて、人間臭い血生臭さが撒き散らされるのが肝と云えよう。



特に、途中で
『シャイニング』
のジャック・ニコルソンが憑依したかの如く血の快楽に耽るオーラは、パロティを凌駕していて、圧巻であった。

つい先日、大作映画
『マイケル』
のかけがえの無い相棒・バブルス君に遭遇し、感動したばかりだったので、何とも云えぬ皮肉な味わい深さの《スリラー》だったのは、云うまでも無い。

お後が宜しくないトコロで、最後に短歌を一首

『歪む笑み 気付く奈落や えぐる彼 引きずり叫ぶ 波の血飛沫』
by全竜