※ネタバレか否かは、読者の自己責任なので、あしからず。
シネマ#60
『箱の中の羊』
in新静岡セノバ
原案/脚本/監督/編集/是枝裕和
出演/綾瀬はるか●大悟●桒木里夢●清野菜名●寛一郎●角田晃広●野呂佳代●星野真里●中島歩●余貴美子●田中泯etc
2026年/東宝●GAGA●フジテレビetc

採点/77点
一昨年、幼い愛息を亡くし、心の傷か未だ癒せない建築家夫婦の基に、或る日、息子そっくりのヒューマノイドが届き、それぞれが迎える、そう遠くない未来の家族の築を問う物語。
新しい形で抱える運命を共存する噺は、スピルバーグの『A・I』や、篠原涼子の『人魚の住む家』etcが存在しており、量産する試験段階での両者の喜びと戸惑いは、中環地点に位置する世界と云えよう。
抱える微妙な親心を綾瀬はるかと大悟と云う何ともミスマッチな夫婦のぎこち無さが興味深く掘り下げており、SFとはまた異なるアプローチで大切な家族を失った後だからこそ、今から未来への構築を考えさせてゆく。
追憶と傷みに向き合う道に、彼はどう存在すれば良かったのか。。。
抱く葛藤や後ろめたさ、歯痒さ、苛立ちetcの胸中は元より、
なぜ、息子の生命が絶たれたのか?
其の他に発生中の連続幼児失踪事件との関連は?
当日以降、実母や会社などの家族・仲間との関わりは?
どんな言葉を掛けるべきだったのか?
そもそも、レンタルする基準は?etc.etc
多くの疑問は、観る者の心に委ね、追う必要性は、是枝作品ならでは独自の渦の行方に浸かりながら、価値観を共有して行かざるを得ない。
大切な事こそ、誰も教えてくれないし、姿も見えないモノである。
童話『星の王子さま』での一文を引用したテーマは、依頼された建築中の家の導線は住む主に任せてゆくポリシーに重ね合わせながら、複雑で慎重に薄氷を踏む想いで同じ屋根の下に暮らす痛々しさに結び、絡む。
全容は語らず、箱の中へと潜ませているから更に、残酷に淡々と深味を増してゆく。

両親との確執や、虐待、後継者不足、少子化etcetc身勝手な人間が抱える多くの問題を、あどけない表情のヒューマノイドが背負わされる矛盾
で浮き彫りになり、答えなきまま、流された末、観る者が解釈する。
わかりやすく、同時にわかりにくい。
禅問答の様な繰り返しは、『誰も知らない』や『万引き家族』から続く是枝映画の敷き詰める哲学の渦巻きを象徴し、濃く刻む点と線の在り方やと私は受け止め、悟った。
此のモヤモヤしたもどかしさは、自分自身が家族を築いた時に、漸く晴れてくれるのか?
結局、肝心な答えは、委ねられたまま、劇場を後にする。
そんな6月最初の休日なのであった。

では、最後に短歌を一首
『陽の狭間 更地と傾斜 帰す生命(いのち) 宿す窓庭 順路問う席』
by全竜