清水の老舗蕎麦屋 

『ふるさと』

 にて、今年最後の独り会を有意義に嗜む。 




 2杯目のジンジャーエールで、過熱する食道を潤したら、いよいよお任せコースは、怒涛の後半戦へと突入してゆく。




 呑気にお代わりを呑んでいると、卓上に様々な装置が揃い、いきなり賑やかに折り返し地点を飾る5品目は、名物 

『⑤鴨肉と冬野菜の銅板焼き』 

のスタートに、展開は尚も活気づく。 




 熱した銅板に、鴨肉と野菜を気ままに乗っけて、ジュ~ジュ~と痛快に焼き上がる様子を愉快に眺める。




周りは、一律、蕎麦を啜って、味わっている中、唯一、私だけ、薫り高い煙に塗れながら、豪快に独り焼き肉を興ずる空間は、何だか恥ずかしいけど、物凄く楽しくもある不思議な一時だ。



鴨肉に火が通ったら、桜海老塩をマブして、アツアツを頬張る。



肉厚な鴨全体からほとばしるジューシーな甘味が、銅板以上に心地良く鳴り響く。

気ままに育てながら、突っつく独り焼き肉は、忘年会気分を煽って、テンションも上がる♪上がる♪

大将自慢の柚子辛子味噌󠄀を乗っけると、刺激的に旨味に着火し、味わいが様変わりするのも、高貴な肉々しさと云えよう。




能天気に焼き上げていたら、火種が尽きてしまったので、新たな固形燃料を追加し、点火。

鴨肉を一通り嗜んだら、旬の冬野菜を中心に乗っけて、第2ステージが開幕である。



タマネギ、ニンジン、カボチャなど根菜類が勢揃いで、焼き肉と双璧を成し、力強い勇姿で構えており、箸も軽やかに運ぶ。

故に火が通りヅラいのが難点だが、事前に下ごしらえの時点で、あらかじめ火を通してから提供してくれているので、焼きやすい配慮をしている心遣いが素晴らしい。

長年、一流店と謳われている理由を改めて実感しながら、ネタをひっくり返してゆく。



焦がしを効かせながら、大胆に頬張ると、肉類とは異なる甘美が拡がり、魅了する。

特に焼き肉系では珍しいダイコンが、一際甘くみずみずしいアプローチに胃袋は命中して、心焦がした。

冬は鍋も主流だが、独り焼き肉も堪らない醍醐味やなと、だらしなく笑顔が咲き誇りまくっていると、今度は、専用コンロがセッティングされ、大いに驚く。

登場するメインの6品目は、シンプルな鍋料理の代表格
『⑥湯豆腐』
が雄大に真四角の貫禄で真打を務めた。



鍋がグツグツ沸騰したら、純白の熱き個体をすくう工程に年甲斐も無くハシャぐ。



主役が独りに対し、タレが2種類備えている演出もニクい。

先ずは、左のポン酢醤油にダイブし、ハフハフ火傷覚悟で嗜む。



サッパリと柑橘の風味が豆腐の細部まで染み込み、奥深い熱気に本能は湯気の渦へと吸い込まれてゆく。



今度、右の醤油ダレに浸して食す。



秘伝の蕎麦ツユのカエシを起用しており、濃厚な豆腐の魅力を一歩も引かずに受け止め、豊潤なるエネルギーを一気に放出させ、感涙の悶絶を生む。

タレにより、対照的な表情を浮かべ、翻弄してゆく。

湯豆腐は、まさに、鍋の顔役なのだとしみじみ思う。

いよいよ、〆は、此方も、年末に合わせ、シンプルにて、王道の
『⑦かけ蕎麦』
で、有終の美をズルズル奏でた。



晦日を前に、まさに、
《リアルガチ1杯のかけそば》
とは、出川哲朗もひれ伏す粋な演出に、ヘブンにイッテQと云えよう。



地味やけど純粋に美味い。

ふるさとの土台の力強さをまざまざと魅せつけられた。

最後は、
『⑧ふるさと特製ミニパフェ』
で甘〜〜くフィナーレ。



今回は、年末にちなんで、抹茶アイスがセンターを務め、和のコースを麗しく結んだ。



人事異動で職場が移動し、相変わらず慌ただしくて仕方無い師走だが、挫けず挑む勇気と覚悟を身体の中から授けてくれたと思う。

このまま無事に1年を〆括りたいと改めて、皆に感謝しながら店を後にする師走の昼下りなのであった。

では、最後に短歌を一首

『鍋と板 浮かべし結ぶ 喰い納め 根まで潜らせ 崩す口(グチ)まで』
by全竜