《5月の独りふるさと会●後編》 


 老舗蕎麦屋 

『ふるさと』 

にて、毎月恒例の独りランチ会を嗜む。




 ジンジャーエールをお代わりしたら、5月のおまかせコースは、怒涛の後半戦へと突入してゆく。




 折り返し地点でも、5品目で一段と麗しく存在感を放った逸品こそ、 

『⑤ムギイカの姿焼き』 

である。




 先発、中継ぎ、抑えと、今月はムギイカのフル登板に迎え撃つ此方も嬉しくて舌を巻く。

イカの姿焼きってえっと、季節柄、縁日の屋台で見掛けるどデカいサイズを連想しがちだが、今回は、随分小柄で可愛らしい。




しかし、当然ながら小兵の大エースを侮るなかれ。

旨味のパンチ力が凝縮し、惜しげもなく炸裂。

持ち前のイカ墨を絡ませたハラワタのホロ苦いアプローチが、胃袋に攻め込み、染み渡る。

改めて、必殺技にKOと云えよう。

一進一退の熱戦ならば、暑い時こそ、熱い追撃を得るのが、初夏のスタートダッシュに乗る秘訣であると、大将に説かれ、満を持して御出ましした6品目が
『⑥そら豆とシラスのアヒージョ』
である。



グツグツとマグマの如く熱線を発射する好戦的な出で立ちは、幾ら熱いにも程が有るやろと、冷や汗が溢れた。



そら豆は、皮が硬かったり、臭味が漂うなど好き嫌いが激しく二分される食材だが、大将こだわりの厳選朝採れ野菜陣の飛車角として自慢の精鋭だけあって、蒼く瑞々しい風味が、イヤミ無くホットに浸透し、涼し気な快感に遭遇したのは、不思議な衝撃にひれ伏す。



シバケットにシラスも乗っけて、豪快に頬張れば、海と畑の両者のソフトな甘味が触れ合う効果で、ヤケドが和らぐフォローも嬉しい。

いよいよ、〆は、夏日に相応しく、スピード感満点に、
『⑦特製冷やしそうめん』
を繰り出されたから、最後までお手上げである。



冷水で引き締めた白糸をたくさんの薬味皿と器が囲み、好みの相性を試行錯誤しながら、味わい見いだしてゆく何とも趣向を凝らした完成度は、風流の一言に尽きる手法で、選ぶ手も優柔不断な箸を握り、迷ってしまう。



アレコレ啜り、練り梅や大葉などがベストだった。

しかし、根っから貧乏症と面倒臭がりな性分が祟り、程なく結果的に、そうめんの上に総ての薬味を乗っけて、ツユを大胆に掛け、かき混ぜて食す《冷やしぶっかけ》
スタイルに落ち着いたのだから、準備した甲斐を台無しにしてしまい、申し訳ない。。。



でも、冷やし麺は、何も考えず、チュルチュル嗜む。



コレが1番美味いね♪♪と開き直り、笑って啜る私は、恥ずかしい生物やなと、つくづく思う。

最後は、デザートに
『⑧アイスクリーム盛り合わせ』
を振る舞われ、涼し気に甘美を楽しむ。



サービスに、朝採れイチゴも追加で付けてくれたから恐れ入る。



甘酸っぱくツマミ、大将と談笑し、時の流れを暫し忘れる事ができたので、申し分ない夏の入口へ導いてくれた持て成しに感謝する呑気な昼下りなのであった。

では、最後に短歌を一首

『白糸を 手繰れば夏の 行方問う イカん無く推す お墨付き也』
by全竜