《笑いの歴史学》 


 『釣りバカ日誌2』 


 inBSテレ東 


 監督/栗山富夫


 脚本/山田洋次●堀本卓

 撮影/安田浩助

 
音楽/久石 譲

 
美術/重田重盛 

原作/作・やまさき十三 ●画・北見けんいち 


 出演/西田敏行●石田えり●谷啓 ●アパッチけん●戸川 純●野澤あや●園田裕久●笹野高史●内藤武敏●庄司永健●久米明●丹阿弥谷津子●原田美枝子●三國連太郎etc 

 1989年●松竹 




 昭和の喜劇邦画代表と云えば、文句無しに
『男はつらいよ』シリーズが挙げられるが、平成に差し掛かると、さすがにパワーダウンは否めなくなった。 


 松竹きっての貴重なドル箱シリーズを放っておけるワケが無く、救援策として、併映の白羽の矢が立ったのがご存知『釣りバカ日誌』である。 


 浜ちゃん&スーさんの釣り好き師弟が織り成す凸凹コンビは、たちまち人気を博し、シリーズ化。


 寅さんと入れ替わるように看板シリーズに登り詰める道を決定づけた記念すべき2作目が、先日、BSテレ東で放送され、録画し、休日に改めて観たが、やっぱし、面白い。 


 亡き父も、そうだったが、シリーズで最も好きな作品である。 


 平成に渡り、長く愛された要因として、『男はつらいよ』との大きな差別化が明確に挙げられている点に尽きるだろう。


 ①両者とも会社員である事 

②コンビ芸である事 

③物語が趣味に特化している事

 ④二人の関係が公にできない秘密を抱えている事

etcetc

ならべたら、キリが無い。 


 ヤクザ者で渡世と逸脱している寅さんに対し、浜ちゃんとスーさんは、バブルに沸く現代日本を駆け抜けるバリバリのサラリーマンであるのは、特徴的ポイントと云えよう。


 釣りに夢中でグータラな浜ちゃんに比べて、スーさんは鬼よりも恐いワンマン社長と、立場が全く異なるものの、皮肉にも同じ会社であるため、2人の関係性はバレてしまうのは御法度であり、隠さざるを得ない危うさが、ほのぼの路線に緊張感を持たせ、物語がダレない。 




 特に、初期はまだ三國連太郎は、喜怒哀楽に迫力満点であり、釣りを興じる西田敏行とのコンビは、ぎこちないが、其の分、往年の恐さが残るゆえ、怒りと愛嬌とのギャップが実に愛しく、魅力へと直結している。

此の波瀾万丈なサラリーマン世界で巻き起こるドタバタは、クレージーキャッツが一世を風靡した東宝の『無責任シリーズ』を彷彿とさせており、ほぼ同じキャラで両者間で右往左往する課長役の谷啓は、極めて貴重な存在と云えよう。

此の稀有な構成は、寅さんの要であった《マドンナ》においても、顕著に違いが現れている。

そもそも、原作コミックでは、マドンナの存在は皆無に等しい。

二人とも既婚者だからだ。


中でも、浜ちゃんの愛しの奥さん・ミチコさんは、石田えりが演じている時点で、もう充分、銀幕の華を果たしてしまっている。




故に、マドンナの対象は、自然にスーさんへとシフトが向けられる運命と化す。

恋愛ドラマが寅さんよりも年齢が高まってしまう
リスクを持つが、其の瞬間的に咲く淡いロマンスが、オッサンと化した今の自分の眼で覗くと、束の間の花火の如く愛しさを覚えて堪らないのだ。

今作からの記念すべき初代マドンナ《原田美枝子》の成功は、とても画期的であり、美しく愛らしい光は、次作の五月みどりに受け継がれ、形式を変えながらも、最後まで発進してゆく魅力を担っている。



寅さんにおける甥の満男が恋物語の主舵をバトンタッチするのと合致しており、男女の合体模様は共通しているのは、面白さのエンジンと云えよう。

ってな事をグダグダと述べてしまったが、まぁ娯楽映画は、結局、余計な事を考えず、気楽に観るにかぎる。

つまり、そう云う事なのである。

では、最後に短歌を一首

『糸切れて 恋し彷徨う 伊良湖かな 巡る天女と 忍ぶ合体』
by全竜


私のお気に入りシリーズ

 

 

 

 

 

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