シネマ#番外編
『男はつらいよ●テレビドラマ版』
監督/小林俊一
原作・脚本/山田洋次
出演/渥美清●長山藍子●佐藤オリエ●杉山とく子●井川比佐志●津坂匡章●東野英治郎●佐藤蛾次郎●森川信etc
1968年フジテレビ
休日は笑える映画を観たくなり、ゴロゴロと自宅で、棚のコレクションを物色。
ならば、日本喜劇の王道が頭に浮かんだが、チョイと趣向を変えて手を伸ばしたのが此方。
昭和を代表する国民的シリーズの夜明け前、寅さんは、フジテレビ発のテレビドラマ出身だったのは、あまり知られていないだろう。
皆無に近いほど、ほとんどフィルムが現存していないのも大きい、
渥美清が死去した際に、スタッフ達が懸命に呼び掛け、探し求めた末、第1話と最終話のマスターテープが奇跡的に発見され、DVD化が実現し、ようやく日の目を見る事になったのである。
妹・さくらは長山藍子、夫・ひろしは井川比佐志、伯母ちゃんは杉山とく子と、配役は全く異なる中、唯一映画版と同じ家族のおいちゃんを演ずる森川信と渥美清とが掛け合う丁々発止なやり取りは顕在で、映画版と遜色ない面白さが味わえるのは嬉しい。
全話通して御前様(笠智衆)はまだ不在だが、代わりに中学時代の恩師として東野英治郎が登場。
先生の長女であり、寅の幼馴染みの佐藤オリエと恋に落ちてしまうマドンナとの淡い距離感は、既に確立しているのは興味深い。
其処に、舎弟の津坂匡章や佐藤蛾次郎が、映画とは設定が違うキャラで、とらやに転がり込み、賑やかに物語が進んでいくが、あいにくフィルムが残っておらず、貴重な写真を基にダイジェストで説明する応急処置は、ファンとして非常に残念で仕方ない。
歯痒く見守る中、いよいよ最終話。
何と、寅次郎は、一儲けしようと、奄美大島に乗り込んだものの、ハブに噛まれて死んでしまうと衝撃の最期を迎えてしまう。
本当に死んでしまったのか、定かではない結末だったが、視聴者は大激怒。
「寅を殺すな!!」
と抗議の電話が局に殺到し、回線がパンクした逸話が残っている。
この騒動がキッカケで、映画化に結びつき、以降、今も愛される黄金シリーズを築きあげるとは、キャスト・スタッフ共に誰一人、想像だにしなかったであろう。
私はリアルタイムに劇場で観た世代ではないので、若々しくヤンチャな寅さんに会えたのは、新鮮味に溢れ、とても楽しかった。
先日、職場のレクで上映会を催したら、利用者の皆さん一同、まさかの展開に驚いていて、笑ってしまった。
今後、自分が所有しているシリーズのDVDをまた、持参して楽しませたら、寅さんの心意気はまだ元気に息づいていると思う。
そんな令和の呑気な午後なのであった。
では、最後に短歌を一首
『柴又の 縁(えにし)辿れば 鐘が鳴る 瞼に浮かぶ 兄ちゃんの笑み』
by全竜