※ネタバレか否かは、読者の自己責任なので、あしからず


《午後11時の映画祭》



『ミッドサマー』




監督/アリ・アスター


出演/フローレンス・ピュー●ジャック・レイナー●ウィル・ポールター●ウィリアム・ジャクソン・ハーパー●ウィルヘルム・ブロングレン●アーチー・マデクウィ●エローラ・トルキア●ビョルン・アンドレセンetc. 


2019年・アメリカ





家族を突然の惨劇で失い、悲しみに打ちのめされ、鬱気味の女子大生ダニーを心配する恋人や友人達は、彼女の気分を和らげようと、大学の民俗学の研究で知ったスウェーデンの山奥の村にて、90年に1度開催される祝祭を訪ね、旅へ出向く。


美しい花花に囲まれた豊かな自然と、常に笑顔で接してくれる心優しい住人達の温かい出迎えに、グループ一同は癒され、感動を覚える。


儀式にも参加し、急速に村の生活に溶け込もうとするが、徐々に村全体を覆う謎のしきたりに準えた不可思議な世界に浸され、血濡れた狂気に気付くも、既に遅し。


楽園の元、集団で次々と執行する悪夢の渦に呑み込まれていく恐怖を描いた前代未聞のスリラー映画。


人間の醜い精神を露骨に曝すオドロオドロしい物語はかなり苦手なのだが、今年は、かの大作『パラサイト・半地下の家族』の旋風を浴び、衝撃への免疫は身に付けているから大丈夫やろと、勝手に勘繰り、気楽に劇場へ出向いたのが、仇となった。



冒頭で老夫婦が揃って崖から身を投げ頭部を砕け散るマクラからして、絶句し、想像を絶する儀式の着工に重い目眩が付きまとい、濁る息を呑んだ。


一貫して、憑依する不穏な空気が拭えない居心地の悪さは一体、何なのか?!


パラサイトは娯楽要素として、人間の欲望が垣間見えるのに対し、今作は巧妙に仕掛けられる伏線に、人物の意図、理由が一切、掴めないからに尽きるであろう。


妹が両親に手を掛けた惨事にしろ、村人達が呪いの如き儀式を畳み掛ける動機が総てにおいて、漠然とした重苦しさで振り回されていく。


崇め祀る神のため、皆の平和のため、そもそも、こう云う伝統なのだから、と表情は笑顔のまま黙々と、また一人、また一人、儀式の生け贄にされ、捧げられてしまう。


神儀ではなく殺人だ!間違っている!!とダニー達は怒り狂うべきなのに、有無を云わさず、儀式のルーティーンに参加させ、あなたは村の女神やと丸め込まれていくうちに、村人と一体感を生んでしまう集団心理の恐ろしさを目の当たりにする。


不気味な絵画の数々を皮切りに、振る舞われる料理や飲み物には、一体何が入っているのか?

そもそも此れは何の肉なのか?

美しい緑の大地の下には何が埋められているのか?

目映い笑顔の裏で皆、何を考え、何を企んでいるのか?

何もかも信用できなくなる疑心暗鬼の闇の深さは、カルト宗教の洗脳や独裁国家の成り立ちを皮肉る社会風刺のタッチをもはや、完全に凌駕している。


清々しい自然と、笑顔の似合う人々が血塗れで心身を染めるブッ飛びまくる迫力は、麻痺を超越して、歴史が育む様式美すら目の前の地獄に対し、煌めきを抱くまでに至った。


そして、華麗な花冠を被り泣き疲れたポスターの彼女の涙のワケを掴めた絶望の快感に辿り着く。


祭りの根本に這う主義は、《生》と《死》であり、表裏一体化した此のテーマは、

やがて《性》と《子》へ濃厚に直結する。


そう云えば、日本でも、実際に山深い田舎町で、子孫繁栄を願って、巨大な男根のオブジェを神楽に担いで大勢の男女が部落を練り回る奇祭が、みうらじゅん先生の紹介などで知り、顔をしかめる経験があった。


しかし、今の血を誰かが受け継がなければ、地球は今後、回転していかなくなると、説いているのに過ぎないと気付く。


クライマックスの男女各々の喘ぎと嗚咽が対峙する絶叫の反乱射は、今作の悲劇と喜びを凝縮し、一気に炸裂した決定的場面と云えよう。


未だ独り身の自分には、やたら痛い自覚を少しずつ咀嚼し、呑み込んでいく後味の悪さを己の唾の苦さで痛感した。。


今年、『イッテQ』のお祭り企画が晴れて復活すると報道されたので、もし、此の村を宮川大輔や出川哲朗が訪れたら、どうリアクションするんやろ?と、普段の私なら笑い飛ばして、ツッコみまくるトコロだが、今が今だけにシャレになっていない事態である。


爆発的に蔓延するコロナパニックの恐怖が支配する地球にて、もし、万が一、何処かの国の何処かの村で、呪いを払い除けるため、旅人を狩り、血肉を生け贄として天地に捧げているかもしれないとしたら、、、と脳裏をよぎると、咳1つすら溢せない自分は、何と情けないオスなのであろう。。。


そんなタメ息混じりの窒息感を引きずりながら、中国からの観光客が途絶え、閑散とするショッピングモールをあとにする曇天の午後なのであった。



では、最後に短歌を一首


『笑み垂らし 軋む花園 儀の浸り 砕く静けさ 種ぞ巻く頃』

by全竜


 そして、恒例の《スッポンポンデータ》で候


《制限区分》

Rー15


《全編》

147分


《お楽しみ時間/セミヌードを含む》

約2分


《お楽しみ時間所有率》

1.4%


《乳首の披露》

あり


《陰毛の披露》

あり


《ベッドシーン》

あり


《プロポーション》

★★☆☆☆


《芸術度》

★★★☆☆


《物語性》

★★★☆☆


《エンターテイメント性》

★★☆☆☆


《興奮度》

★☆☆☆☆


《オススメ度》

★☆☆☆


《総合》

★12

 

 

 

 

 

 

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Ameba映画部