※ネタバレか否かは、読者本人の自己責任なので、悪しからず
シネマ#2
『ゴジラ−1,0●重低音体感上映版』
in新静岡セノバ
2023年●東宝
監督・脚本・VFX/山崎貴
音楽/佐藤直紀●伊福部昭
出演/神木隆之介●浜辺美波●山田裕貴●青木崇高●吉岡秀隆●安藤サクラ● 佐々木蔵之介etc
採点/86点
師走に入り、連休が貰えた。
年末に久々に劇場に行きたい了見に駆られたとキたら、やっぱし、日本人なりゃ、コレを観なけりゃ、年は明けれんと朝から突撃した次第である。
オッサンになろうが、『シン・ゴジラ』や『ゴジラ・キング・オブ・モンスターズ』etc目覚ましく進化していくゴジラを幾度も見届けてきたが、どんなに特撮技術が飛躍しようが、やっぱし、第1作目の1954年度版は超えられない。
ファンも創り手も悟った神話の様な真実である。
じゃあ、逆手に取り、終戦直後まで遡り、神話夜明け前を描く山崎組の姿勢は、開き直りすら感じて、むしろ、潔く、純粋に面白かった。
山崎組は、『続・三丁目の夕日』の前座噺に既に、ゴジラを召喚した実績があり、満を持して、真打の芸に架けた情熱は、長年培われた十八番である昭和の日本の息吹を、東京に吹く風を、見事に蘇らせている。
故に、容赦無くゴジラがフルスイングで街を叩き壊し、逃げ惑う人々を踏み潰す地獄絵図に、絶句してしまった。
トドメに、彼の吐く熱線が、観る者の腹わたに叩き付ける。
ゴジラは、原爆の申し子なのである事を。。。
ずっと疑問だったのだが、原点モノならば、エピソード0ではなく、なぜ、マイナスが付くのか?
私なりの解釈では、敗戦直後で立ち直れない日本其の物だけでなく、特攻作戦から逃げ、生き延びた卑怯者扱いされた主人公・神木隆之介の背負うトラウマも丸ごと意味しているのではなかろうか。
ゴジラには、ハナから勝ち目の無い立場であると色濃く示し、突きつけている。
つまり、再び玉砕覚悟で戦えるのか?を有無を言わさず、問うているのだ。
この重く痛々しい宿命は、銀幕を通し、東日本大震災やコロナ禍etcの困難をやっと乗り越えてきた今の我々、日本人にも通じていると思い、受け止めると、なぜか、途中から、涙が溢れた。
しかし、ゴジラの模様を中継する記者達の最期や、ゴジラのテーマを聴くと、1作目を思い出し、興奮している己に気付く。
また、市民主導での撃退作戦は『ウルトラQ』やな、特攻野郎がカギを握る最終決戦は『ゴジラの逆襲』やなetcetc過去の名作達と重ねてしまうのが、昭和特撮オタクの呆れた性分と云えよう。
ボロ船で遭遇するのは、『ジョーズ』のニュアンスも入っているのかもしれない。
etcetc
でも、最後の最後に渡来したのは、山崎組の代表作『永遠の零』であった。
戦争は愚かであり、平和は尊いのだと、ゴジラを喩えに、永遠に唱えているのではないだろうか。
賛否両論分かれるラストの敬礼は、《日本と戦争の対峙》を象徴している大事な場面であると、唇を噛み締め、立ち上がりながら、しみじみ思った。
では、最後に短歌を一首
『傷痕に 深き轟き 焦がす牙 悪夢ぞ晴らす 朝日起つ迄』
by全竜