《9月の海鮮大会(ダイカイ)》
季節を問わず魚の王者と云えば、やっぱし、マグロに尽きるだろう。
となると、いつもは清水港の魚河岸に向かうのが常だが、今回は、真逆の蒲原駅前まで愛車を転がす。
老舗食堂『蒲原館』が夜間限定で、天然鮪料理専門の居酒屋をオープンしたからである。
屋号は
『角・kaku』
マグロを扱う大手メーカー《八洲水産》と提携し、上質のマグロをリーズナブルに提供するスポットとして港町の魚好きから注目されており、仕事帰りに直行した次第なのだ。
一角のテーブル席に腰を降ろし、
ノンアルコールビール¥480で喉を潤す。
先ずは、お手並み拝見と、生で味わいたくなり、
『南鮪のお刺身盛り合わせ¥1280』
で、舌鼓を打つ。
赤身と中トロが揃い、どちらも脂が乗っており、濃厚にトロけゆく。
なるほど、マグロを手掛けるプロフェッショナルの腕前に笑顔で頷く。
ならば、他の創作料理も興味が湧いてきたので、品書きを覗き、本能の趣くままに、手を伸ばす。
人気一番メニューは、
『天然鮪のねぎま串¥480』
天然鮪を炙った脂とネギの焦げ目の相性が相乗効果を発揮。
ミディアムレアの赤身の柔らかな甘味が際立ち、胃袋にテンポ良く弾む。
センターに君臨する力量に納得するクオリティだ。
続いて、2位の
『天然鮪の揚ポン酢¥480』
揚げた鮪の柔らかい肉質に、特製ボン酢がサッパリと染み込み、上品な仕上がりは、力み無く箸を誘う。
ノンアルコールビールを呑み干し、お代わりすると、マグロ以外の料理も堪能したくなった。
居酒屋の定番の1つ
『出汁巻き玉子¥580』
は、職人の手作りを謳っている通り、ふっくらと黄金色に輝く至高の艶が悩ましい。
甘さは一切無く、大根おろしに醤油を含ませ、楽しむ辛党の大人好みの世界観を構築しては、食す
者の頬を崩落させてゆく。
オッサン泣かせの罪な玉子焼である。
続いては、駿河湾育ちのヤキソバ星人には決してスルーできない1品
『桜海老焼きそば¥680』
をオーダー。
コシの強い蒸し麺の弾力に、ソースが甘辛く絡み合い、干し桜海老の芳ばしさが、本能をくすぐり、焼きそばの理想像を描いており、マグロ料理と双璧の感動をもたらす美味さだった。
此処は名店だとマグロ以外の、まさか焼きそばで確信するとは、想像もしておらず、驚く己が居る。
最後は、やっぱし、マグロで〆たくなり、
『天然鮪の漬け鮪丼¥780』
で、貫禄のゴールに突入。
旨味が浸透した漬け鮪のパワーが白飯にも深く染み込み、怒涛の勢いで、食欲の秋をかき立てる。
やっぱし、マグロは酒よりもメシが良く似合う。
此れも、今宵の確信と成す。
他にも、気になるメニューが充実しており、仕事帰りに寄ってみるのも、愉快な9月ではなかろうか。
では、最後に短歌を一首
『名月の 芯に染み入る トロの海 突け(漬け)ば響かす 膨らむほどに』
by全竜