《秋の肉の丼大会(ダイカイ)》

今回は、《豚肉編》
を特集している。

真打はやはり、“カツ丼”だろうと云う結論に独りで達した。

ならば、専門店のエキスパート『かつや』へ出向くのが、王道やと思うが、私は、讃岐うどんの巨匠・富士市の
『だいきち』
を選ぶ。

讃岐うどんの老舗なのに、なぜ、豚の丼のオオトリに抜擢したのか?と問われると、うどんと共に、《とんかつ》も二枚看板として、活躍しているのだ。

でも、その前に前菜に、主軸と並ぶ名物
『静岡おでん』のブースから立ち上る湯気の誘惑に負け、ついつい手が伸びてしまう。

コロナの影響で、暫く封印され、ようやく解禁となり、なおさら、魅力に惹かれるのである。

牛スジは¥180、
それ以外のネタは、一律¥130とリーズナブルな値段設定も嬉しい。

ゆえに、欲張ってアレもコレもと皿に盛る欲望に弱い私が居る。

今回は、静岡おでんの絶対エース・牛スジ&黒ハンペンを双璧に、大根、たまご、結びしらたきをチョイス。

静岡おでん特有のダシ粉をタップシ掛けて、食すのが、流儀。

アツアツをホフホフと口の中で悶えながら転ばし、冷えた
ノンアルコールビール¥350を勢い良く流し込む。

ノンアルコールながらも、此の熱き快感に酔う。

特に、おでんの醍醐味である大根は、うどんのツユの旨味を存分に吸収し、類い稀なるホットな存在感を放つ。

つくづく、おでんの似合う季節になったもんやと、しみじみ実感したトコロで、メインの
『カツ丼セット¥1300』
が、堂々たる貫禄で登場。

お目当てのカツ丼は、専門店に負けぬ厚みと軟らかさを誇る豚カツが、タップシのダシ汁を染み込ませ、文句なんざぁ、云わせぬ圧巻の旨味で迫りゆく。

相棒の讃岐うどんは、冷しぶっかけを選択。

のびやかに、しなやかに、弾む麺の喉越しに魅了される。

となると、季節柄、温かい方も啜りたい衝動に駆られた。

後日、再訪し、温かタイプのうどんでランチを嗜む。

主菜は、豚肉くくりで、
『とんかつ定食¥1350』
をオーダー。

イイ♪

凄いキツネ色だ。

豚肉なのに、文句なしのキツネ色なのだ。

遠慮無くソースをぶっかけ、豪快にカジれば、サクッとジューシーに溢れる豚肉の力強い甘味に優しく癒される。

相棒の素うどんも、素朴な温もりに包まれ、本来の熱気を帯びた喉越しに暫し感動を味わう。

此の悦びを主菜に、白飯をもう1杯お代わりしたくなる。

本格的に冬が到来する直前の秋の静けさに、存分に胃袋を温める事ができた。

そんな10月の昼下りなのである。

では、最後に短歌を一首

『湯気誘う 熱気を手繰る 秋の笑み 濃い(恋)も眺めぞ トン(豚)だ昼なり』
by全竜