※相変わらず長文であり、なおかつ、ネタバレか否かは読者の自己責任なので、あしからず
シネマ#31
『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』
in静岡東宝会館
監督/ジョシュ・サフディ
出演/ティモシー・シャラメ●グウィネス・パルトロウ●タイラー・オコンマ●オデッサ・アザイオン●川口功人etc
2026年/アメリカ

採点/79点
1950年代のアメリカに卓球黎明期に活躍した実在の選手マーティ・リーズマンの波瀾万丈な人生を追い掛けた物語。
中学時代、部活は卓球部に属したものの、私たった1人しか同学年は入部せず、全校生徒から蔑まれながら、汗をかき、
「みんな死ね!!どいつもこいつも、みんな死ね!!」
と叫び、スマッシュを打ちまくっていた苦い青春の血が疼き、雨ン中、劇場へ向かった。
元々、卓球自体がとても地味なスポーツなので、反動ゆえか、選手の苦闘を描く映画において、必然的に妙にエキセントリックな作風が炸裂する傾向が見られて久しい。
特に邦画は、顕著である。
『ピンポン』しかり、『稲中卓球部』しかり、、、
私は、ガッキー主演の『ミックス』がお気に入りであり、例外は、周防正行の『卓球温泉』ぐらいだろうか。
海を越え、時代を超え、娯楽の殿堂アメリカでも、自伝的ノンフィクションな内容を予想し、『知ってるつもり?!』を観る感覚で、気楽な了見で、自由席にふんぞり返っていたら、思いっ切り頭ン中目掛けてスマッシュを撃ち込まれたショックを受けた。
主人公自身が、卓球選手うんぬん以前に、人間として、もう、どうしょうもないクズの中のクズであり、尚且つ、女ッたらしで、ワガママであり、更に、嘘ツキでサイテーな無責任野郎だったからである。
情熱は溢れ出している輝かしい才能は認めるものの、詐欺や喧嘩は日常茶飯事で、不倫に借金踏み倒し、挙句の果てに、警察の厄介になるの繰り返し。
スポーツ選手としての限度を遥かにオーバーしており、むしろ、さらば青春の光・東ブクロや二丁拳銃・小堀の様なクズ芸人をテレビで眺め、呆れ返って、自分は未だマシな人間やとショボい優越感に浸る感覚に近い。
腕は天才的なだけに、自滅型に突き進む才能は、素直に勿体無く、眼鏡が良く似合う愛嬌から、いつの間にか私は、彼を
《卓球界の横山やすし師匠》
と名付け、見つめていた。
ッて、何のコッチャ?!怒るで、しかし!!
と私の脳内を、やすしくんが颯爽と通り過ぎてゆく。。。
もし、私と同じ中学で、卓球部入部を希望していても、そんなエグい男は、直ぐに門前払いされていたに違いない。
地頭はイイのだが、平気で嘘と悪口ばかりほざき、嫌われていた奴がクラスには必ず1人はいたと思うが、彼は其の化身とも云えよう。
我が中学では、ソイツは、バスケ部だっけ。
(そもそも、バスケ部と野球部には、時代を問わず、クズとアホしか属さない)
今でこそ、世界卓球etcで、漸く近年、盛り上がりを魅せているスポーツだが、戦後間もない頃、卓球なんざぁ全く注目されず、長らく最も惨めな存在に追いやられていた。
(そういや、卓球ディナーショーって、結局、どうなったんやろ?)
無論、プロ選手なンざぁ居るワケも無く、遠征費や練習環境などは自分自身で地道に工面しなければならない。
苦労は解るが、口先だけで、スポンサーを騙し、丸め込む詐欺師顔負けの道中は、お気の毒とは云え、同情の余地は皆無に等しい。
自業自得やがな、ざまあみろと云いたくなる。
家族や友人、腹に身籠り出産間近の奥さんや、せっかく応援してくれる貴重なパトロンの1人である女優グウィネス・バルトロウまでも、仲間は皆、災難に巻き込み、不幸に陥れるのだから、そりゃ笑えない。
疫病神としてもワールドクラスの代表である。
だが、そんな彼のクズッぷりが様に成るのが、皮肉にも、見事なヒールとしての魅力に光り、言動が面白味を増すキャラに変身していくのだから、何とも不思議だ。
悪態をつけば、つくほど、彼の独壇場と化し、狭い卓球コートが、四角いリングのジャングルへと拡がり、宿命のライバル・日本代表エンドウとの一騎討ちも、完全に喰ってしまっていた。
タイガー・ジェット・シンや蝶野正洋に通ずる神々しさは、最後の決着まで、完全にふてぶてしいままだったのは、もはや芸術的とまで云えよう。
故に、彼を1人の人間として、同情の欠片を垣間見えたのは、最後の最後の大オチの場面での表情のみである。
あんなに憎ったらしかったのに、エンドロールで泣いて拍手を贈るのは、唯一、彼だけやと思う。

先日、WBCの日本代表に心無い誹謗中傷が大量に投げ込まれたニュースにやるせなくなったが、そう云う奴らに是非見て欲しい作品である。
炎上する前に踏みとどまる辛抱と勇気。
エンドウの心意地を受け継ぐハズの我々日本人にも既に失ってしまった情熱と何か大切なモノを掴ませてくれるキッカケが、此の作品には潜んでいる。
卓球部員の端くれとして、ふと思う雨の休日なのであった。
では、最後に短歌を一首
『ブタ箱や ケツぞ手玉に 撃ち噛ませ 犬の首剥ぐ(Hug) スマッシュ込めて』
by全竜