雨は鬱陶しいが、涼しくて過ごしやすい夜である。ここのところ忙しく気が昂っているので、精神安定のため処方箋によりボストンのファーストを聴く。若い頃は、ボストンは「スタジアムロック」の筆頭みたいなバンドで、トム・ショルツの偏執的な録音に対する拘りが、バンドメンバーとの溝を深めた…というような音楽雑誌の記事を真に受けていた。しかし彼らの音楽を熱心に聴くようになってから知ったのだが、ボストンのレコーディングは、元々トム・ショルツが中心となって作曲・ドラム以外の楽器演奏を担当し、ドラムはジム・マスデアに任せた二人体制だったとのこと。サラリーで稼いだお金を注ぎ込んで、自宅地下を改造したスタジオに篭って6年レコーディングに費やしたという。もちろんバンドの音に生命力を注ぎ込んだバリー・ゴードリューのリードギターや、バンドサウンドの要とも言えるブラッド・デルプのボーカルはボストンになくてはならない存在だろう。トム・ショルツはキンクスの"You Really Got Me"が大好きで、ギターを始めた原点のようなことを動画で語っていたのを観たことがある。"More Than A
Feeling "はとても美しい曲だが、パワーコードの魅力が彼の核にあることがよく分かる名曲である。