仕事帰りのバスは今日も混み合っていて、運転士が詰めて欲しいとマイクを通して促していました。
平日の夕方に差し掛かる時間。西日が差して暑い。バスには近隣の学校の生徒や買い物でも行くのであろう一般の客が乗っています。
わたしの住む辺りの公共バスは、進行方向左の前側にベンチシートで3人分の「優先席」が設けられています。
わたしはだいたいいつもこの優先席とは反対の側へ位置取りして奥へ入っていきますが、今日は乗客の立ち位置の関係で優先席の側へ入りました。
優先席には既に3人、高齢者と見てわかる人が座っていたので、わたしが席を譲られることはないと思いましたが、わたしが前にたったところに座っておられた婦人が、わたしが手に持っていたリュックを持ち上げて、
「カバンを持ちますよ」
というのです。
わたしは「いえいえ」と遠慮するわけですが、婦人はニコニコしながらもうわたしのリュックを持って膝に乗せてしまったので、
「ありがとうございます」
と、恐縮して礼を言いました。
駅まで10分弱ほどありますが、婦人の膝に載せられたわたしのリュックをわたしがそのまま、やりっぱなしにしておくのも心苦しいので、リュックの上にわたしも手をかけていました。
わたしはこういうときの社交術はうまくないので、特に話すことも浮かびませんでしたし、途中のバス停で人も乗ってきますから、あまりこの場を動きたくないなという方に気が向いて、バスの外を見ながらいつもより少し長く感じる乗車時間を過ごしました。
バスが駅に着く時、バスには冷房が入っていたので、揺られながらちょうどよく感じたのでしょう。わたしのリュックを膝に乗せていた婦人を見ると、目をつぶりウトウトとしています。起こすのも気が引けるような気はしましたが、わたしは少し腰をかがめて小声で、
「あぁ、すみません」
と2度ほど声をかけると婦人が目を覚ましたので、「ありがとうございました」ともう一度、礼を言って会釈をしリュックをもらいバスを降りました。
外はまた暑い空気の中で、高校生中学生の若い男子が話しながら一際大きな声で話、中には走って駅の中へと消えていきます。わたしもその人混みに混じって流れて、袈裟懸けにしたサコッシュ※から電車の定期を取り出すときにはもう、いつもの帰り道にもどっていました。
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お、なんか今日は作家の随筆っぽい出来じゃない?もう少し人物描写とか社内風景を取り入れたらいいと思うけれど、長くなると書くのがしんどいんですわw
※サコッシュ
ポシェットがマチ付きの小さめなカバンであることが多く、ショルダーバッグほど大きくない、大概はマチのない小さめの袋状のカバンをサコッシュと呼びます。
オッサンがこれを使っていると、結構ダサく見える(当社比)