パンダと柿の種が道ばたで話していました。
柿の種はいいました。「桃栗三年柿八年というからね、ボクは今から土に潜って八年経たないと実がならないんだ」
それを聞いたパンダはいいます「考え方が古いよ、柿の種さん。八年も経たないと実がならないのは、センスの無い証拠。センスのある種は半年もあれば実を付けるよ」
それからパンダと柿の種は、どっちの言い分が正しいかで言い争いになり、お互いに譲りません。
そこへ農家のおじさんが通りかかり、二人が言い争うのを聞いていいました。そして「桃栗三年柿八年のあとには続きがあって「ゆずは九年で成り下がる、梨の大馬鹿十八年」というんじゃが」
それを聞いたパンダと柿の種は、「ふ~ん」といいました。
農家のおじさんは続けて「そういうのは、ただの比喩、例え話じゃ。標語と同じ。「石の上にも三年」「注意1秒ケガ一生」とかそんなのいろいろあるの、アンタたちも知っているじゃろ?どれも、「それだけ手間が掛かる」とか「そういうことに注意しましょうね」とか呼びかけるのに作られたことばじゃよ。だからそれをオオマジメに何年かかるのは遅いとか速いとかいっても、意味はありゃせんよ。人間だって同じ、織田信長だって豊臣秀吉だって自分の才能で上り詰めていったんじゃろ?年功序列なんてことばがあるだけで、厳密にそんなことをしているところなんてあるもんかね」
農家のおじさんはそういうと、歩いて行ってしまいました。
パンダは何事も無かったように笹の茂みに潜ると座り込んで笹を食べ始めました。
柿の種は土に潜って見えなくなりました。