盛り付けが雑・・・

 

 

皆さんは毎晩、山のように積まれた豚の角煮を貪り食う夢を見ているのではないでしょうか。


わかるわかる!

 

が、角煮は手間もコストもかかりますので家庭料理にも店のメニューとしても向かない料理です。


かと言って、スーパーて売っているペナペナの角煮なんて角煮じゃない!

 

そんなわけで、なかなか食べられないホンモノの角煮はロマンが詰まった男の料理であり、追い求める価値は十分にあります。

 

さっそく喜々として角煮づくりに着手しましたが一言でいうと角煮づくりは沼であり、5kgほども作ってやっと納得のいくものが出来ました。

 

というのも、角煮の基本は非常にシンプルなのにもかかわらず、細部については違いがあり、その違いが決定的に味や食感に影響を与えますので、その組み合わせで無数に作り方があります。

 

かくなる上は、何度も実験と試行錯誤を繰り返し、自分にとってベストだと思うレシピと調理法を探し出すしかありません。

 

お好みもありますので、以下はどなたにとってもベストな角煮かは分かりませんが、一つの基準にしていただけたら嬉しいです。

 

 

  角煮のタイプ

 

角煮と言っても、角がキチンと立って上品な薄味のタイプから、豆腐のような食感のトロトロ・デロデロタイプまであります。

 

また、中までジックリ味を染み込ませたタイプと、中は味がなく濃い煮汁を周りにまとわせたタイプのものがあります。

 

色も薄茶色から真っ黒まであります。

 

このどこを目指すかで、レシピや作り方が変わります。

 

私は初めトロトロ・デロデロタイプを目指していて、一応の完成は見ましたが、あまりに煮崩れしやすいために完成後の取り回しが難しく、途中から見た目のいいしっかりタイプに路線変更しました。

 

それでも中はトロトロが理想です。

 

 

  レシピ

 

・豚バラ肉ブロック 500g(以下の写真は1kg)

 

<下茹で>

・ネギの青い部分 ネギ一本分

・ショウガ 2枚

 

<煮付け> ※数字は割合。

・しょうゆ 1

・酒 1

・砂糖 0.4

・はちみつ 0.3

 

 

  肉選び

 

バラ肉は三枚肉とも呼ばれ、脂と肉が三層になっていますが、ものによってはほとんど脂身ばかりという部位もあります。

 

逆に肉が多すぎると最終形がトロトロになりづらくなりますので、肉と脂がバランスよく三層になっているものが理想です。

 

 

 

 

  課題の整理

 

大まかな工程は下茹で後に調味料を入れて煮付けるというものですが、詳しく書く前に課題を整理しておきます。

 

①下茹での前に切り分けるか否か

②下茹での前に焼くか否か

③煮付けに下ゆで汁を使うか否か

④煮汁のレシピ

⑤どこまで煮汁を煮詰めるか

 

 

  下茹での前の処理

 

まず、下茹での前に最終の大きさに切り分けるか否か、そして焼くか否かですが、実はこの2点が大問題で、ここで完成形の多くが決まってしまいます。

 

下茹で前に切り分けるメリットは以下の通りです。

 

・下茹で後に切るより型崩れしにくい

・各ピースを6面とも焼ける

・ナベにムダなく並べられるので、小さめのナベでも調理できる

 

デメリットはこの反対ですが、もう一つのデメリットは切ると表面積が増えるために肉汁やゼラチンが茹で汁に逃げやすいことでしょう。ただし、周りを焼き固めてしまえば気にするほどではないと思います。

 

なお、肉は調理中に縮みますので、切るのであれば大きめ(500gを5~6等分くらい)に切ります。

 

 

 1kg分

 


次に、下茹で前に焼くメリットは以下の通りです。

 

・初めに余分な脂を落とせるので下茹で後の処理が楽になる

・煮崩れしにくくなる

・焼き目が煮汁に溶け、香ばしい味が増える。

・色が濃くなる

 

デメリットとしては、表面が固くなりますのでトロトロ感が落ちますが、その代わり角のしっかりした見た目のいい角煮ができますので、人に出すのであれば焼くのが必須だと思います。

 

逆に言えば、形が崩れていても離乳食並みにトロトロな角煮は、男の料理だけの特権とも言えます。

 

私は試行錯誤の末、下茹で前に切り分け、一番下の肉層を除く5面を焼くというところに落ち着きました。

 

 

 

 

 

 

  下茹で

 

ナベに豚肉、しょうが、ネギの青い部分を入れ、豚肉がしっかり浸かるくらいの水で茹でます。

 

 

 

 

初めは強火で、沸騰したらアクを取り、フタをして弱火でコトコト煮ます。

 

下茹での時間ですが、豚肉は煮れば煮るほど柔らかくなるという人が多く、2時間以上という方もいます。

 

が、私の仮説ですが、煮過ぎるとプルプルの元であるゼラチンが下茹で汁に出すぎて食べると糸状にほぐれ、かえって筋っぽい食感になる気がしています。

 

ということで、下茹で時間は沸騰後1.5時間に決めました。

 

一方、圧力鍋だと火にかける時間が短いためにコラーゲンがゼラチンに変性し切れないのか、柔らかくても弾力が残って箸でホロっと崩れる感じにはなりません。

ただし、煮崩れもしにくいために角がしっかりした無難な仕上がりになりますので、絶対に失敗したくない場合は圧力鍋がベストだと思います。 

 

圧力鍋の場合は、下茹で20分→急冷→煮付け20分→自然冷却がいいようです。

 

 

  下茹で後処理

 

下茹でが終わったらネギとしょうがを捨てます。

 

下茹で汁の表面は脂で覆われていますが、この脂をどのくらい捨てるかは悩ましいところです。

 

下茹で汁をいったん冷蔵庫で冷やせば表面の脂が固まり、100%除去できるのですが、脂を完全にとると出来上がりのトロトロ感や照りに影響するように思えるのです。

 

また、豚肉のおいしさの大部分は脂の甘みですので、ある程度は脂をまといながら食べた方がおいしいはずです。

 

とは言え、脂が多ければくどい味になるのも確かですので、ここはお好みとしか言いようがありません。

 

私の場合は量をバクバク食べたいので、脂は可能な限り除去することにしました。

 

なお、煮付けに下茹で汁を使わないようでしたら、この悩みはありません。

 

 

  煮付け

 

豚肉を下茹で汁、または水、あるいはその混合液で煮ます。

 

下茹で汁だけだと後々くどい味になるという人もいますが、私は豚肉のうま味やゼラチンを大量に含んだ下茹で汁を捨てるのはもったいないと思っています。

 

味付けは、5回目にして何とか上記の比率を見つけました。

もっと甘くする味付けもありだと思いますので、これを基準にお好みで改造いただければと思います。

 

色の濃い角煮にしたい方は濃口醤油を使うと濃くなります。

また、砂糖の代わりにザラメを使うとコクが出ます。

ただし、これらは塩分や糖度が普通のものと違いますので、味見をしながら量を調整してください。

 

ちなみに、イメージと違って薄口醤油の方が濃口醤油より塩分が強いです。

 

調味料の実際の量は鍋の大きさにもよりますので、肉が浸かるくらいに液を入れた上で、上記割合の調味料を薄味になるくらい投入します。目安としては、豚肉1kg前後の場合で上記の割合1あたりが100ccという感じです。

 

煮付け後に煮卵も作りたい場合は、煮汁がある程度の量がないとうまく浸かりませんので煮汁を多めに作り、その分調味料も増やします。

 

落し蓋をして、弱中火くらいで煮ます。

煮詰めますので、鍋のフタはしないでください。

 

 

 

 

たまに煮汁の味見をしながら、しょっぱいと感じる寸前で火を止めます。

もし、しょっぱいと感じたら水を足します。

その時点で1~1.5h煮れればベストです。

 

 

 

 

なお、濃い煮汁まとわせタイプの場合は、肉を取り出してからさらに煮汁を半量くらいに煮詰めます。

 

 

  煮付け後

 

中まで味染み込ませタイプの場合は、そのままフタをして粗熱を取り、2日ほど冷蔵庫で寝かせます。

角煮が煮汁の水面より出ている場合は、キッチンペーパーを被せると全体に味が入ります。

 

煮卵を入れたい場合は、熱湯から7分半茹でた卵を、肉と一緒に煮汁に漬け込みます。

 

濃い煮汁まとわせタイプの場合はすぐに食べるか、保存するのであれば肉と煮汁を別々に保管しないと肉がしょっぱくなると思います(作ったことありませんが)。

 

 

  サーブ

 

角煮はヤンチャに見えてサーブも繊細です。

 

まず電子レンジはダメ、絶対!

内部の脂で肉質部分がフライになるのか、所々がカサカサ固くなって食感が悪くなります。

 

ナベで煮汁ごと入れて沸騰させ、その後フタをして弱火で10分ほど温めます。

 

煮卵がある場合は、最後まで温めるとせっかくの半熟が台無しになりますので、少し温まったら取り出します。

 

煮崩れしないようにそっと皿に盛り、上に白髪ネギと糸唐辛子を乗せるとそれっぽく見えます。