1985年の日航123便墜落事故から40年が経過し、1987年には事故調査報告書にて事故原因が発表されてますが、今でも事故についての議論が行われております。
それが「事実をベースとした見解の違いについて」といった議論であればいいのですが、中には荒唐無稽で根拠のない誹謗中傷でしかない異論も多々見受けられるのが現状です。
事故の再発防止のためにも、ご遺族の方々のためにも、正しい情報を基にした正しい議論が行われることを願ってやみません。
ちなみに私個人は「事故調査報告書が真実に一番近い」と考えてますが、報告書よりも説得力のある論説があればそちらを支持するつもり……というスタンスです。
そんな日航123便墜落事故の"真実"を求める2つの団体がございます。
この2つの団体の主張は真反対と言えますので、どちらの団体のスタンスを支持するにしても、ごっちゃにならないよう気を付けましょう。
①日航123便墜落の真相を明らかにする会
②JAL123便 事故究明の会
2つの団体の概要を簡単にご紹介いたします。
①日航123便墜落の真相を明らかにする会
- 2020年に発足。
- 会長はご遺族の吉備素子氏。事務局はノンフィクション作家の青山透子氏。
- 123便事故(会としては「事件」と呼称)の真相を明らかにするべく、日航123便の機体残骸を引き上げを求めて発足。公式サイトの「発足の目的」に記載はございませんが、FDR(フライトデータレコーダー)やCVR(コックピットボイスレコーダー)の公開も求めてらっしゃるようです。
- 青山さんの著書の内容を「陰謀説」とする佐藤正久議員に対する抗議文を団体サイト上に掲載していることから、団体の方針は青山さんの著書の内容をベースとしてらっしゃるのでしょう。
(事故の原因は自衛隊の誤射で、当日の捜索活動は意図的に遅らされて、証拠隠滅のために火炎放射器で生存者を焼き払った可能性がある。 etc) - 吉備さんを原告としたFDRやCVRの公開を求める裁判に関する情報発信も行っているので、この裁判も会としての活動の1つのようです。
- 公式サイトはこちら。
https://jalflight123.wixsite.com/mysite
ブログに事故の再調査を求める署名活動に関する投稿がございましたので(と言うかブログはこの投稿の1件のみ)この署名活動も団体の活動の一環かとも思いましたが、署名ページには団体名の記載がありませんでした。それにこの署名活動は小田周二氏の論説による部分が大きいように見受けられますので、再調査を求める活動を支持とまでは言わないにしても応援はしている……くらいのスタンスなのかもしれませんね。
■団体ブログ
■署名サイト
②JAL123便 事故究明の会
- 2024年に発足。
- 会長は第35代陸上幕僚長でJAL123便事故派遣隊員だった岡部俊哉氏。事務局は「なでしこアクション」代表の山本優美子氏。
- 「真実の記録と資料を纏めて事故とその教訓を後世に正しく伝え、いわゆる陰謀書籍によって拡散されているデマに対し事実をもって打ち消して損なわれた自衛隊の名誉回復を目的」として活動をなされてます。
- これまで関係各所へ公開質問状を送付したり、関係者の証言を基にしたシンポジウムを開催したりなどの活動を展開。
- 公式サイトと呼べるものはございませんでしたが、つい先日(4/21)「なでしこアクション」のサイトに【123便】のカテゴリが作成されたようです。こちらを「JAL123便 事故究明の会」からの情報発信元となされる模様。
http://nadesiko-action.org/?cat=38
何故「なでしこアクション」で、と思いましたが、事務局の山本さんの父君でらっしゃる藪口幸男氏は事故当時、入間基地の副司令かつ現地指揮官でらっしゃったとのこと。山本さんは先日のシンポジウムでも司会を務めてらっしゃいました。
http://nadesiko-action.org/?p=19282
今後も「なでしこアクション」のサイトから情報を発信していかれると思いますが、「なでしこアクション」は元々慰安婦問題に関する活動を行ってらっしゃる団体。間違った歴史認識を正すという意味では近い活動と言えますが、個人的にはわかりやすい情報発信のためにも123便に関する問題は別に切り離して扱われた方がよろしいのではないかと思います。
「日航123便墜落の真相を明らかにする会」が事故調査報告書は不服だとして再調査を求めているのに対して、「JAL123便 事故究明の会」は『誤った陰謀説』が拡散している状況に対するカウンター活動を主としている、と言った感じです。
どちらの会を支持するべきか、わかりやすく言うと……
- 123便事故を『悲しい事故だった』と思う。
→「JAL123便 事故究明の会」を支持 - 123便事故を『自衛隊の誤射に端を発した、恐ろしい大量殺人事件だった』と思う。
→「日航123便墜落の真相を明らかにする会」を支持
となります。
ちなみに私は「JAL123便 事故究明の会」を支持します。
前述の通り事故調査報告書の説明が一番説得力があると思ってますし、そもそもの話として、国民を守ってくれている自衛隊の方々が「火炎放射器で民間人を焼き払って大量殺人を行った」なんて想像することすらおぞましいです。
それでも自衛隊がやったと判断せざると得ない証拠が出てきたら考えを改めますが、事故から40年が経過した今でもそんな証拠は何一つ出てきていない認識です。
「JAL123便 事故究明の会」から青山さんに著書の内容について公開質問状を送ったところ、代理人弁護士から「青山氏著作から読み取れるものであり、よって加えて回答することはない」との返答があったとのこと。著書の内容に関する質問なのに、返答が嚙み合ってない気がしますね。
http://nadesiko-action.org/?p=19263
故・森永卓郎氏にも公開質問状を送ったところ、原稿料支払いの上との返答があったそうですが、原稿料を含めて対応を検討中に森永さんがお亡くなりになられたとのこと。議論が進んだ可能性があっただけに非常に残念です。
改めてご冥福をお祈りいたします。
http://nadesiko-action.org/?p=19247
有名な123便事故の陰謀論には「優秀な日本製OSのTRONが世界に広がることを恐れたアメリカが、TRON開発者が乗った123便を撃墜した」なんてのもありますが、これはあまりにも問題外のためどちらの団体も相手にしていないご様子。
そんな荒唐無稽の極みのような陰謀論であっても不思議なことに世の中には固執する方がいらっしゃるので、そのうち何か書こうと思ってます。
主張は真反対な2つの団体ですが、建設的な議論が行われることに期待してます。