ニューヨーク大学ランゴーン医局の移植センターが、遺伝子操作した豚の腎臓を脳死状態の人間に移植して、急性拒絶が起きることが無かったことが大々的に報道された。個人的には、遺伝子操作を施したことがミソで、この類の研究は豚の腎臓の利用はもちろん、人間の腎臓の拒絶反応を減らす意味でも役に立つのでは無いかと、期待している。ミネソタ大学を中心として、より精密なドナーのDNAマッチを追求して、拒絶反応ならびに免疫抑制剤を減らすプロジェクトが進行中である。とくにステロイドは大分減らしている病院も増えてきた。

 

ニューヨーク大学移植センターのモンゴメリー所長は、自身も心臓移植を受けており、ジョンズホプキンス大学で腎移植を数多くこなした名外科医である。今では世界の多くで行われている連鎖型ドナー交換を初めて実行し、8人を連鎖してギネス記録を作った人でもある。インタビューでは2年以内に人間における治験が出る見通しと言っていたが、倫理や法また宗教などの理解を得ることも大切だとのこと。人間の誰かが治験に参加しないとことは進まないわけで、今回も脳死の人体を提供した家族には頭が上がらない。そもそもドナー登録をしており、提供できそうもないので今回の豚の腎臓実験に同意してくれたようだ。コロナワクチンの治験参加も含めて、アメリカ人の積極性は群を抜いている。

 

アメリカは医療の進歩でも凄まじい。今回の豚の腎臓や腎移植マッチングの精緻化もしかり、前回書いたようにイェール大学やカリフォルニア大学が多発性嚢胞腎を減退させる可能性を示す研究結果を示し、似たような結果を示したカリフォルニア大学の教授陣は食事療法を提唱し始めている。ケルン大学(これはドイツだが)やコロラド大学などで治験が進んでいる。サンフランシスコ大学とバンダービルト大学は人工腎臓の研究を進めている。人工腎臓は随分と先の話だろうが、血液透析装置の小型化に拍車がかかると思われる。今でも海外の最新の在宅透析装置は移動式でタブレットで操作するものだが、将来的には腹膜透析のようになるのかもしれない。

 

僕は腎臓以外にも緑内障と大動脈基部が拡大している。そちらはあまり進展していないようだが、ひとまず腎臓医療が進歩して、僕の次の世代の苦しみが減るといいなと心より思っている。多発性嚢胞腎は薬の開発が中止になる暗いニュースが続いたが、明るいニュースもあるので今後も目が離せない。