帰り道が好きだ。
夜。暗くなった街。僕は歩く。
イヤホンを耳に、好きな音楽を聴きながら、今日のあれこれや、明日のあれこれを考える。
いいこともあれば、悪いこともある。
考えるだけで憂鬱なこともあるが、とにかく思いに耽る。
ここは自分だけの時間だ。
しかも、これからの時期が歩くのに心地いい季節だ。
特に、何かが起こりそうな週末の夜はいい。
何でもできそうな気になる。
そんな僕だけの時間に割り込んでくるやつがいる。
今日は3種類。
①名刺交換をしてくる若造営業マン
②テレビ局の取材カメラ
③ロールスロイス
①は最悪だ。
かつて親切心から名刺を交換してあげた。
夜中の22時頃に「名刺100枚もらうまで帰ってくるなと上司に言われてて…」と、泣きそうな顔で言ってこられるもんだから、「かわいそうに」と名刺を渡した。
彼は「ありがとうございます。ご迷惑はお掛けしませんから」と言った。
数週間後、彼から職場に電話が掛かってきた。
投資のセールスだった。
僕はキレた。
「人の親切心に託つけて、何やってんの?詐欺だよね?恥ずかしくないの?」
それでも彼は厚かましくセールスを続けた。
その面の皮の厚さや善し。
しかし、最低だ。
「二度と電話掛けてくんな」
そう言って電話を切った。
こういうことを指導している人、会社がそもそも問題なのだが、
こういうことを言われたままにやっている若人よ、それでいいのか。
もっとエネルギーを使うべきステージが、他にあるんでは?
②は、何かのバラエティー番組の取材班だろうが、軽く無視した。
女の子2人組だった。
申し訳ないが、TV映えもしない顔で、気の利いた発言も即興ではできません。
その辺の酔っぱらいの方がいいよ。
さて、③だ。
会社を出てすぐの交差点。
歩行者信号は青。車道は赤だ。
この場合、僕の中の社会常識では、人間が「進め」で、車は「止まれ」だ。
ロールスロイスはそこに止まっていた。
僕が横断歩道を歩き、正にロールスロイスの前に差し掛かった時、あろうことかロールスロイスが発進しようとしてきた。
車道の信号は赤なのに。
幸い、接触することはなかった。
でも、運転手は悪びれた様子はない。
チキショー。
「何考えてんねん!」と叫ぼうかと思ったが、相手はあのロールスロイス。
中からホンモノのヤクザなんか出てきたら、僕は今夜中に東京湾の魚の餌になっちまう。
ここは抑えた方が賢明だと、瞬時の判断が閃き、運転手を睨み付けるに留めた。
でも、もし乗ってる人が大富豪だったら?
轢かれてたら大金が見舞金・和解金として舞い込んだかも。
想像は自由だ。
僕は夜歩く。
街を闊歩する。
無敵だ。