24時間在宅酸素療法なら障害年金を請求すべき?
65歳前に24時間在宅酸素療法を開始し、法律や基準に規定されたその他の条件を満たしている場合、3級の障害年金を受給できます。
参考:在宅酸素療法とは?
これは、障害年金を請求するかどうか考える際にはまず24時間在宅酸素療法の開始が大きな目安になる、ということです。
では24時間在宅酸素療法ならすぐに障害年金を請求すべきでしょうか…
答えはいいえ、理由は「3級」だからです。
3級は厚生年金にしかありません。
冒頭の「障害年金」とは、国が支給する障害基礎年金と障害厚生年金を指しています。
障害基礎年金が対象としているのは、障害の元となった傷病で初めて病院にかかった日(初診日)に国内に住所を持つ65歳未満の人。
一方の障害厚生年金の対象は、初診日に厚生年金や共済年金(以下まとめて「厚生年金」)に加入していた人です。
そして重要なのは、障害等級の3級は障害厚生年金にしかない、ということです。
本当にその日が初診日なのか、或いはその日本当に厚生年金に加入していなかったのか、慎重に確認する必要はありますが、加入していないと判明すれば障害厚生年金を請求することはできません。
障害の状態によっては2級以上に
障害基礎年金は「初診日に国内に住所を持つ65歳未満の人」が対象ですから、裾野は障害厚生年金より広くなります。
反面、1級と2級しかありません。
では1級や2級に該当する障害とはどのような状態なのでしょうか?
病院で受ける検査数値について、国の障害認定基準にはだいたいの目安が載っています。
<表1>
検査項目 | 動脈血O2分圧 | 動脈血CO2分圧 | 予測肺活量1秒率 |
検査結果上の表記 | PO2またはPaO2 | PCO2またはPaCO2 | FEV1%G |
1級 | 55Torr以下 | 60Torr以上 | 20%以下 |
2級 | 56~60Torr | 51~59Torr | 21~30% |
※あくまで目安です。等級は生活状況も含めて総合的に判断されます
さて、病院でもらった検査結果を調べても、なかなか該当する項目が見つからないかもしれません。
実はこれらの項目は、毎月や隔月必ず行う検査には通常入っていません。
動脈血の検査は横になった状態で足の付け根(鼠径部)から採血しますし、肺活量の検査では思い切り息を吐く必要がありますので、在宅酸素療法の患者さんが頻繁に行うのは難しいという側面があるのでしょう。
そこで、自宅にあるパルスオキシメータの出番となります。
パルスオキシメータが大まかな目安になります
国の障害認定基準には、上記の検査項目のうち「動脈血O2分圧値を重視する」という一文があります。
この動脈血O2分圧は、パルスオキシメータで大まかな換算値を知ることができます。
パルスオキシメータは指に挟んで血中酸素飽和度を測る器具で、在宅酸素療法を医師から指示される際、自宅に備えておくことを勧められます。
測定は、酸素吸入をしたまま椅子などに座り、安静にした状態で行ってください。 ポイントは、酸素を外さない、横にならない、安静にすること、です。
<表2>
パルスオキシメータの値 | 動脈血O2分圧 | 等級 |
88%以下 | 55Torr以下 | 1級程度? |
89~90% | 56~60Torr | 2級程度? |
表2は、このときパルスオキシメータに表示される値(酸素飽和度)が90%以下ならおそらく動脈血O2分圧は60Torr以下でしょう、ということを表しています。
動脈血O2分圧60Torr以下は表1でいうと2級の目安。
パルスオキシメータの値が90%以下なら、2級の障害年金に該当するかも?ということです。
2級は障害基礎年金にもありますから、初診日に厚生年金に加入していなかった人も対象となります(もし加入していれば障害基礎年金、障害厚生年金両方の対象となります)。
実際に病院で動脈血の検査を受けると高い値(2級に該当しない値)が出ることもありますが、可能性がある以上、ご相談だけでもされてみてはいかがでしょうか。