出口戦略 | 「時の人」の発言満載!総合ビジネス誌  『財界』主幹・村田博文の雑記帳

「時の人」の発言満載!総合ビジネス誌  『財界』主幹・村田博文の雑記帳

混迷する日本経済の中で、

次代への希望を見出す智慧

最近、『出口戦略』をどうするか──という言い方をよく聞く。



例えば、昨秋のリーマン・ブラザーズ破綻以降の金融危機に欧米各国で財政資金が投入されたわけだが、資金の支援を受けた企業にモラル・ハザードが起きてはいけないとして一定の規律が保たれねばならないというときの『出口』である。



今回の衆院総選挙でも、それはテーマになった。



民主党がマニフェスト(政権公約)で、子育て支援や高速道路無料化、農家への戸別所得補償など直接家庭を支援する政策を打ち出した。これはこれで国民の心に一定程度響き、マニフェストの効果はあったと思うが、財源をどう確保するかという根本の問題が『出口』で待っている。



郵政民営化の課題



郵政民営化もその一つ。二〇〇五年の総選挙では、国民が圧倒的支持をして、自由民主党の衆議院での地位を盤石なものにした。



郵政民営化論議が持ち上がった当初、250兆円もの資産を持つ巨大な公的金融が、民間の金融体系とは別に存在して、金利体系も別であることの不合理、不条理性の認識があった。



しかも、今回民主党が指摘し続けてきている官僚中心の財政投融資構築に郵貯資金が投入されていた。一般会計、特別会計を合わせて約200兆円の財投資金には官僚が天下りする特殊法人の無駄遣いがあるという指摘があり、郵貯資金が財投に流れ込む『入口』を断ち切るという問題意識からの郵政改革であった。



もっと言えば、郵貯、簡保という国民の大事な金融資産を有効に使おうという、国とすれば基本的な考え方に立っての改革であった。要は、『出口』をどうするかである。



確かに改革には光と影がつきまとう。郵貯、簡保、郵便、窓口ネットワークの四つの会社に分社されての不具合も指摘される〝郵便〟会社の社員が忙しく働いて人手が足りないときに、同じ建物の中にいる別会社の〝窓口ネットワーク〟の社員が我れ関せずで傍観しているだけという光景もある。以前なら、関係者全員で助け合ったのに──と誰もが思う。



こうした〝不合理性〟について議論するのはいい。しかし、改革のスタート地点に立ったときの『入口』の意義を忘れ去っては元も子もなくす。本質を衝いた論議が必要なときである。