レントゲンを撮った後、12時半を過ぎていた。こりゃお昼だと呼ばれるのは2時過ぎかもしれないと思った。身体に悪そうなスナックの販売機だけで、売店などなさそうな病院。昼抜きかと思ってたら呼ばれた。診察室に呼ばれて20分ほど待っていると、「会議が長引いて、、ごめん。」とアラブ医が勢いよく入ってきて、「廊下に出てください。」と言われたのだが、私には意味不明で、「フランス語ができないから英語で言ってください。」と言うと、「気にするな。」と言って出て行った。すぐに看護師が来て「部屋から出て、移動して欲しい。ついて来て。」と言った。


暫く待っていると、電子レンジの音が聞こえ、看護師らが自分のお弁当を温めた順に持って、開けっぱなし診察室で皆一斉に食べ始めた。これで、診察はお昼後だと理解した。自分達は食べて、「〜から診察開始だから」と言ってくれることもなく、平気でいる神経にビックリ。2時過ぎても呼ばれず、2時半に働き出した看護師に、「いつ医者に会えるのか。」と聞いたら、「今、先生は手術中だから。私達も指示を待っている。」と言った。あのアホ医者が手術してんの?可哀想な患者。私は待つしかない。


3時頃、患者を連れた看護師が、立っている私に「はい、あなたも来て。これから手術だから!」と言った。


しゅ〜じゅ〜つ??


いやいや、待って、手術って言うものは、医者からちゃんと説明を受けて納得してするもの。廊下で、「はい来て〜」なんて言われてやるものではない。ましてや、言葉もわからない、リスクもわからないのにするものじゃない。あり得ない。


説明ないのに同意書なんかサインできない。病院内は、携帯の電波が悪く何度かけてもダメだったので、「夫に電話してください。」と言った。ここの看護師らは誰も英語を話せなかったので、快く何度も電話してくれたが、夫がいた場所が田舎過ぎて、こちらは聞こえるもあっちが全く聞こえてない状況が続き、テキストで看護師に電話するよう番号を送った。


待合室には、手術服を着たお爺さんがいて、手が血だらけになっていた。やっぱりあのアホ医師に手術され、包帯からも血で赤くなっている状態で放って置かれている。やっぱりないわ、手術。と意思、固まる。


それから夫と連絡がついて話すと、「今日のレントゲンで見ると骨と骨の間が更に開いていて、手術をすべき。このままにしても良いけど、1ヶ月後にもっと酷い状態になり今より難しい手術になることもあると言われた。俺は今日、手術した方が良いと思う。もっと強くなれ!」と言われる。あまりの突然の展開とバカ医者が恐怖で、涙目出た。どこでもドアで日本へ行って手術したい。それが叶わなくても、あの医者に手術されるのはご免だった。


そして、前日に行った病院でレントゲンも見てもいない、どの指が骨折しているかも知らない男が指を固定したせいで、余計に悪くなったのではないかと私は思った。


強制じゃない手術。あの医師なら直前でも止めよう。一応英文の同意書にサインをすると、「シャワーを浴びてこい」と言われる。シャワージェルや無臭石鹸ではなくて、フランスで怪我した時の御用達品、Betadine(赤チンだと思っていたがイソジンと同じ成分だった)で全身洗えと。さっきのお爺さんはまだ手術していなくて(落ち着いて考えれば当然)、Betadineでシャワーを浴びたお爺さんだったのだ。


手術室に連れて行くと言った若い男性が少し(日常会話程度)英語ができた。これだけでも有り難く、お礼を言うと、「手術の先生達はちゃんと英語を話すよ。安心して。すごい良いチームだから。」と言った。


へ?英語、できる?ってことはあのアホ医者ではないはずだ。私が思うに、あのアラブ医は私へ手術の説明責任があったはずなのに、それも(ランチ優先したのか言葉の問題で)逃げたのだと思う。医師として最低行為。


麻酔される手術室手間の部屋は、気分を上げるポップスがかかっていた。以前いた国で出産した時と似た環境で私にはリラックスできる環境だった。日本では手術は手術室内に音楽はかかるのだろうか。テレビドラマだと、「メス」とか言ってかなりシリアスだけど。


最初に麻酔科医にあったのだが、賢そうな白人イケメンで英語ペラペラだし、優しいし?気配りもでき、説明もしっかりしてくれ私の痛みに対する希望もしっかり聞いてくれた。仕事も早い。そして、手術の担当医も英語ができてとても良い先生だから心配要らないと言ってくれた。


その後、看護師2人に会ったが、2人共優しく気遣いもでき、英語もできて安心したせいで少し泣いた。そんな面倒な私にも笑顔で接してくれて、本当にフランスで初めて会う白衣の天使達だった。


手術出頭医は、年寄り過ぎず、でも経験豊富そうなベテラン風だった。手術前にどう言う手術をするか説明してくれた。


手術が担当できるフランス人は、他の医者と比べて特殊な訓練でも受けたようなプロフェッショナルだった。今までフランスで会ったことないテキパキ動きながら笑顔で仕事する人達だった。こう言うミスが絶対あってはならない場所には、フランスでも一応人を選んでいるようだ。


ちょうど手術が終わった時に、息子を連れて夫がやって来た。笑顔の息子に会えて嬉しかった。2日に1度看護師(病院とは別の所へ電話予約する)が家に来て、包帯を替えてくれるらしい。普段、医者の予約がすぐに取れないフランスだが、手術後のケアはしっかりしているようだ。