いつか退職後にフランスに移住してヨーロッパを旅行したいとは思っていたけど、こんなに早く来るつもりはなかった。今考えると、老後に困らないように、移住前に投資目的で買ってしまったアパートが、私達の気持ちをどんどん加速させてしまったように思う。

 

私と夫はアパートと地下を買った。アパートは、住める人は住めるだろうけど、私達は今どきじゃない部屋をどうにか変えて気持ち良く貸したかった。夫が内装工事業者に依頼する必要があり、妊婦の時にフランスに旅行でやってきたのだ。内装工事する会社を探していた夫に、家を自分で建てた義父が言う。「そんなお金使わないで良い、俺がやってやる」。そのアパートはおかしな作りで、ベランダにトイレがあった。大雨の日にトイレに行きたくなったら、一瞬でも濡れるような作りポーン。トイレは部屋の中に作りなおさないとおかしいとか考え、全面改装することにした。だから、工事をするとなれば、使えるトイレもお風呂もなくなるのだ。そんなところの工事を買って出るとはなんと律儀な人なんだろう。と私は思った。この頃の私はまだ義父に対して嫌な感情はもっていなかった。

 

だから、妊婦で重い物も持ちたくないし、階段も上がり降りなんてしたくはなかったけど、私達がフランスにいる間だけでもと思い、毎日手間のかかる料理を自分のキッチンでもない所でした。

 

義父は3男に買ってあげたトラックでやってきた。どんどん工事を始めて欲しいのに、夫がホームセンターに必要な物を買いに行っている間など、目を離した隙に義父毎日通うのは地下。地下から物を出して、トラックに詰め込んでいた。トラックがいっぱいになると、一旦自分の家に帰り、またやってくる。私も夫も地下は一番最後で良い、とにかく部屋をどうにか改装して貸し出さないと毎月のローンを払うのが大変だ。そう話しても、義父の興味は地下だった。来る日も来る日も地下に行き、フランス滞在中の3週間、そんな人の為に妊婦だった私は酒を買いに行き、昼夜料理させられた。

 

そう、義父の目的は宝探し。あんな地下から、財宝が出てきたとは思わないが、何かをせっせこせっせこ積んでは家に戻っていった。

私も夫も義父が何を見つけたのか知らない。何も語らず、もらって良いかと聞きもせず、まるで自分が買った場所かのように勝手に持ち帰って行った。

 

私達が帰る時、義父はやっておくからと言い、アパートの鍵を持っていた。だが結果から言うと、一度義母と義姪と休みに1週間別荘として使われただけで、全く部屋の改装は進まなかった。