2024年も明けて早3月に突入しました。

毎度の事で更新が開き申し訳ありません。

ここの所何事も無くクルマは快調に走っております。

 

さて多くの方がステルビオといえばまず「ボンネット一体型ミラー」に注目がいき、

良くも悪くも評価が割れてデザインが破綻しているとの否定的意見もよく耳にしますが

今回はその辺りについて書いてみます。

 

このボンネット一体型のミラーに関してZAGATOにオーダーした櫻井真一郎氏は、

その利点として一般的なドアミラーと比較した場合、高速度域での空力的優位性と、

ミラーを見る際の視点の移動がより少ない点を考慮し採用した様です。

 

1989年当時は既に日本でもドアミラー車は普通に認可・市販されていたので、

一部の誤った情報の様な事ではなく、あえて櫻井さんがZAGATO側に依頼する際

ボンネット埋め込み型にしたいとデザイン要望したらしいです。

 

このアイデアは櫻井さん自身がずっと温めていたもので、

歴代スカイラインの開発中に採用を検討された時もあったらしいです。

オーテックの社長として少数限定車ステルビオ製作の際、ようやく採用出来た

アイデアだったのでしょうか。

 

更に時を遡ると1977年東京モーターショーで日産ブースに出展された

「NISSAN AD-2」コンセプトカーでこのアイデアは一般公開されており、

AD-2の開発に櫻井氏が噛んでいたのかは知る術もありませんが

その前身ともとれるかと思います。

 

日産レース活動においても日産が内製マシンに舵を切った1990年、

後のR35GT-R開発者でもある水野和敏氏を総監督に迎え開発されたレーシングカー

「日産R90CP」にも空力的優位性からこの一体型ミラーの発想が見て取れます。

 

その様な流れを振り返ってみても当時日産の一部でこのアイデアは、

空力面・視点移動において有効と認識されていた様です。

ただかなり個性的で奇抜でもある為、一般車には採用出来なかったものの、

少数で特別な「ステルビオ」というクルマの開発において

ようやく採用に漕ぎ着けたとみるのが自然です。

 

 

ステルビオのデザインに関しては殆どをZAGATO側に任せたらしいですが

このアイデアだけは注文を入れたらしく、ZAGATOも苦しんだと想像出来ますが、

最終的には流石によくぞ纏めているなとその意地すら感じさせる程に

このクルマの大きな個性にもなっています。

奇抜で個性的なものほど賛否は割れがちですが、

私などはここが大のお気に入りなのです。

 

所有すると分かりますが、この出っ張ったミラーのお陰で

まるで蛙ポルシェのヘッドライト同様に取り回しもし易く、

速度を上げる程に路面に張り付く感覚が増し高速域での空力面の利点も感じます。

個人的にはこれが無ければステルビオのデザインの魅力は

かなりスポイルされると思います。

おそらく他のオーナーの方も同様に感じているのではないでしょうか。

 

さてデザインばかりが異形だと注目されますが性能面も素晴らしいクルマです。

一例を挙げると燃料ポンプはアウトタンク式で2機を搭載。

アクセルを踏み込むと2個の燃料ポンプからガソリンをグワっと吸い上げるその加速っぷりは

とても三十数年前のクルマとは思えません。現在でも充分な速さがあります。

 

ボディや足周りも様々な箇所に手が入り良いのですが、とにかくエンジンが秀逸で

低速から高速域まで全くストレスを感じません。

高出力ターボでありながら低速から全域でトルクフル且つ

自然吸気並みのレスポンスを目標に開発されたチューンドエンジンらしいです。

 

専用開発のターボ、その効率を上げるためインタークーラー配管を見直し

熱だれ防止に空冷オイルクーラー装着など他にも挙げるとキリが無いのですが

性能面も価格に値するアドバンテージを持っていたクルマなのです。

 

興味のある方楽しんで頂けましたでしょうか。

それでは、またの機会に。