日時   2024年4月14日(日)

場所  サンプラザ市原

出席人数 10名

合評作品 井上昭子「シャロンの百合」

鷺町一平「飼外蜜腺」

勅使川原正子「誰?」


今回の例会はゲストで、第三回槇新人賞に応募をしてくれた島津幸生さんが見学に来てくれました。合評にも参加してくださり、ちゃんとご自分の意見も表明してくれたのでありがたかったです。また機会があればご参加を期待しております。


年度初めということもあり、令和5年度事業報告、令和6年度事業計画、会計決算報告、会計予算案、役割分担表、これからの合評予定など、盛沢山でしたが、乾会長より説明があり了承されました。


「シャロンの百合」は定年退職したばかりの有能な看護師である紫音が主人公。彼女は敬虔なクリスチャンでもある。夫が脳出血で倒れてしまい病院に通う日々。そんな中、紫音に思いを寄せる同じ教会の信者である沢田が近づいてくるという話。作者が推敲を重ね、何度も書き直しをしている中で描写力があがりより濃密な作品になったという評価もあるなか、婚約者がありながら紫音に近づく沢田の行動に説得力がないという意見や、きれいごとだし紫音の感情の動きがない、幸福一家の話で俗っぽい面白さが一つもないという意見もあった。


「花外蜜腺」は、モッコウバラに生まれ変わった女性の心情を描いた異色作。人間だったときの熱愛を振り返る。心中だと思っていた相手の男が生きていたことを知り復讐する話。実際の事件をベースにしているが、心中方法に疑問が残り、男が死なないのは自明ではないかとの意見や、女の情念がよく描かれている、短編なのに無駄がないとの意見もあった。


「誰?」は入会以来、毎月作品を提出している意欲あふれる作者。その情熱はなにものにも代えがたい。すべては後からついてくるのだと思う。

間違いショートメールから若い男と懇意になっていく中年女性の心理を描く意欲作。とあるサイトに誘導されそうになり途中から返信を止めるが、それでもしつこく誘ってくる若い男。はたしてそれは本心かあるいはまた…。地の文を極力排し、互いのメールのみで進めていく構成。互いのメールは書体を変えたり時系列を明記したりと工夫のあとがみられる。

全体的に好評価が多かった。斬新であるという意見が大半を占めた。一方、小説といえるか、もう一歩も二歩も足りない。結局男の目的がなんだったのかわからないので中途半端だとする意見もあった。


次回の例会はGW明けの5月12日です。それではまた次回の報告をお楽しみにしてください。