神保光太郎は「呼ぶ」 | ザブの校歌日誌

ザブの校歌日誌

全国の校歌(高校中心。大学もある程度)の収集、研究をしている中での気づきなどを発信してまいります。

久しぶりの投稿になりました。

 

年末にかけて山形県下の高校校歌リストをまとめておりまして、以前から気になっていた作詞家について統計をとってみました。

 

神保光太郎。山形出身の詩人。校歌では「ボーイズ ビー アンビシャス」で有名な日大山形を作詞していますが、かねてからこの人が手掛けた校歌で好きな曲が多く、特に神奈川大学、神奈川県立鎌倉は名曲と言えるでしょう。

 

さて、その神保校歌については、何点か特徴があるのですが、全体的に非常に前向きな歌詞といえます。「若者はかくあるべき」といった教訓的な詞というよりかは、「ワクワクする新時代(戦後初期)を頑張って生きていこう」という若者目線の詞が多い気がします。

 

それをデータで検証すべく、神保光太郎が手掛けた高校校歌(一部大学含む)を山形、埼玉、東京、神奈川で調べてみました。

私が現時点で把握する限りでは山形県7校、東京1校、神奈川3校、埼玉7校の計18校でした。

 

その中で、頻出するワードとして「世界」が9校で、「世紀」が11校、「夜明け」が5校で用いられております。

氏の作品の約半分で「世界」や「世紀」が用いられているわけですね。この「世紀」という言葉は「21世紀」という意味ではなく、「新時代」という意味合いです。作詞されたのは大体1950年代初め~1966年頃であり、終戦後の新時代の幕開けの時期に当たります。そういった背景から新たな「世紀」の「夜明け(幕開け)」とうたっているのでしょう。

 

そのような新時代の息吹きを謳歌するような神保校歌は、まさに私のストライクゾーンど真ん中ともいうべき校歌なわけですが、それよりも神保校歌を特徴的ならしめている頻出ワードがあります。

それが…「呼ぶ」

 

18校中10校で用いられています。そして大抵の場合、擬人法とセットで使われており、「朝は呼ぶ」「海は呼ぶ」など、目に見えない大きな力に導かれるような不思議な感覚をもたらします。

以下、神保校歌における「呼ぶ」の使用状況です。(年代は制定年)

 

<山形県内 11校>

県立尾花沢 1954 1番「…父なる山よ われを呼ぶ」

県立寒河江 1951 3番「世界の夜明けほのぼのと とどろき渡る呼び声よ」

県立寒河江工業 1966  1番「はるかなり 月山は呼ぶ」

県立庄内総合(前:余目)1952 なし

県立新庄南 1953 なし

県立天童 1951 1番「山は呼ぶ」 2番「河は呼ぶ」 3番「朝は呼ぶ」

日本大学山形 1960 なし

県立山形中央 1961 なし

県立山形西 1953 なし

県立山形南 1950 なし

旧制山形第二中 1948 なし

 

<東京 1校>

日大豊山 1959 1番「朝は呼ぶ大東京の」 

           2番「森は呼ぶ 歴史も古き豊島ヶ丘よ」 

           3番「友は呼ぶ 決意は燃えて」

 

<神奈川 3校>

県立鎌倉 1955 1番「朝は呼ぶ かがやけり学び舎の窓」

           2番「山は呼ぶ きよらなり 不二ケ嶺の雪」 

           3番「海は呼ぶ とどろなり わだつみの声」 

県立横浜立野 1957 3番「世界の風の呼ぶところ」 

神奈川大学 1951 世界は呼ぶ 1~3番全てのサビで連呼

 

<埼玉 7校> 

県立岩槻 1966 なし  

市立浦和南 制定年不明 3番「いざ呼ぼう  世界の夜明け」 

県立浦和工業 1961 なし 

市立大宮北 1958 なし 

県立大宮 制定年不明 1番「…はるけき道は われを呼ぶ」 

                2番「歴史の夢は われを呼ぶ」

                           3番「世紀の声はわれを呼ぶ」 

県立熊谷工業 1966 なし 

県立与野 なし

 

神保校歌の約半分で「呼ぶ」が使われていますが、校歌で一般的に使用頻度がそれほど高いワードではないだけに、神保校歌の特徴として際立つ気がします。

しかも、神奈川大や鎌倉、大宮のように1番から3番まで「呼ぶ」が、まさに「連呼」されると(笑)インパクトとしてはかなりのものがありますね!