魔王102最終話 | 青のパラレルワールド物語

青のパラレルワールド物語

青さんが登場する空想小説を書きます。ご本人様とは一切関係ありません。
腐話もありますので苦手な方はご注意ください。

 

この後、後書きもどきを上げます。

 

 

 

 

 

 

 

 

翔 最終話

 

 

 

「芹沢は・・・芹沢は・・」

「成瀬さん・・?」

 

急に歯切れの悪くなった彼を

俺は覗き込んだ。

なぜか、俯いている。

 

「どうしたのですか?」

 

そりゃ、目の前で人が亡くなったんだ、

きっとショックだったはず・・

無理に聞かない方がいいのかもしれない。

 

「成瀬さん、無理しないでください・・

思い出したくないですよね。」

 

俺は優しい声で彼を慰めた。

だが、彼はすっと顔を上げた。

 

「いえ、全部話すと決めたのだから・・

いいます。

芹沢は、

櫻井さんと一緒に倒れ込みましたが、

すぐに立ち上がりました。

でも、自分が握った果物ナイフの先が

赤く濡れていることに気が付いて

動きが止まりました。

僕も倒れた櫻井さんの服が

みるみる赤くなるのが見えて

怖くて動けなかったんです。

僕は救急車をって、

早く救急車を呼んでと

あいつに訴えました。

芹沢がハッとしたように、

体の向きを変えて

電話の方に走ろうとした時でした。

ドンと大きな音がして・・

倒れたのです。

そしてそれきり

ピクリともしなくなって・・」

 

成瀬さんがみたことは・・そうなんだ。

 

「・・事故だったのですね。

成瀬さん、

警察に事情を聴かれて大変だったでしょう・・」

 

俺は心から彼を気遣ったつもりだった。

だが、彼は、

成瀬さんは、

いきなり俺の腕を振り払うと

俺の正面に向き直った。

 

「櫻井さん、

僕は今言ったとおり

警察に話しました。」

「えっ・・・成瀬さん?」

「余分なことは

何もいっていません。」

「成瀬さん?」

 

成瀬さんが俺に何度も伝えてくる。

さっきまで怯えていた彼が

今は、唇の端を少しだけ引き上げた、

ゾクッとするような笑みを浮かべている。

 

「櫻井さん、

こんな夜中にわざわざ僕に会いにきて、

芹沢のことを聞いたのは、

僕が余分なことを

警察に言ってないかの確認でしょう?」

「成瀬さん、何を言ってるんですか?

余分なことってなんですか?」

 

思わずそう返してしまったが、

不味いと気が付く。

 

「何を言い出すんですか?

あの日すでに養子になっていたとしたら

一番に疑われるのは、

成瀬さんですよね。

芹沢の資産が

どれくらいあるのか知りませんが、

金持ちであることは事実だ。

でも警察はそう思わなかった。

俺は本当によかったって

思っているんです。」

 

俺は俺の気持ちを必死に訴えた。

だが、彼はゾクゾクするような笑みを浮かべたまま

首を振る。

 

「櫻井さん・・僕が頼んだのだから・・

櫻井さんに助けて欲しいと・・

櫻井さん、僕のこと愛してくれますか?」

 

ダメだ‥抗えない・・

俺は、コクンと人形のように

不自然な動きで頷いた。

俺は堕ちたんだ・・・

二度と抜け出せない・・暗い穴に・・

 

満足そうな顔で成瀬さん、

いや、今は芹沢智となった大野智は

俺に両手を伸ばしてきた。

そのまま、

その唇が俺のをとらえて深く口づける。

 

甘くしびれる感覚に俺は、

思わず彼の腰に手を回していた。

 

彼は唇を離すと俺の耳元で囁いた。

 

「櫻井さんが僕を愛してくれるなら

僕は何も言いません。

櫻井さんが

芹沢の足を掴んだなんてことは・・・」

 

 

 

 

 

 

終わり