魔王66 | 青のパラレルワールド物語

青のパラレルワールド物語

青さんが登場する空想小説を書きます。ご本人様とは一切関係ありません。
腐話もありますので苦手な方はご注意ください。

 

 

 

 

カズ

 

 

 

 

 

 

 

留置所の壁にもたれるようにして、

俺は考え込んでいた。

どうにもわからない・・・・

何がおきた?

 

「また来るからな、

差し入れはお前の好きな

ハンバーグでいいか?」

 

そんな当たり障りのない言葉を残して

去った井ノ原さん。

2階から聞こえた

あの大きな物音はなんだったのか?

慌てふためいた警官が放った言葉・・

 

「怪我人がいます・・・」

 

誰が怪我したんだ?

サトなのか?

芹沢が慰謝料の支払いを拒否して

サトに暴力を振ったのかもしれない。

あいつはすぐに切れるって有名だしな。

ヘタレ櫻井翔は助けなかったのか?

何のために行ったんだよ、櫻井翔。

 

とにかく早くサト連絡をくれ。

大丈夫なんだろう?

上手く事が運んだか、確かめたい。

俺がトイレに隠したぶつも

回収したんだろう。

あれが見つかると

俺もおまえもやばいことになる。

とにかく、早く・・・・

サト・・・

 

 

 

翌日俺は、刑事の取り調べを受けた。

 

鈴木と名乗った中年の刑事は

俺の前の椅子に腰かけた。

 

「二宮和也 28歳、

職業、喜多川芸能事務所所属のタレント

住所、杉並区阿佐ヶ谷西岡平東8丁目30

間違いないな。」

 

それなのに俺に

上から目線で怒鳴ってきたのは、

横の立つ俺と同じくらいの若造だった。

 

「小川、いきり立つなよ。

相手の方が冷静だぞ。」

「先輩、こいつ俺見たことあります。

ストームというグループのメンバーです。

お笑い番組とかに出てますよ。

もう一人の丸メガネのおっとりした奴と一緒に。

そうだろ、二宮!」

 

鬼の首でもとったかのように、

鼻の穴を膨らませている。

 

「ふ~ん、

アイドルってことかな、二宮君。

さて、そのアイドルがなんで

そんなことやったのかな?

儲けているんだろう?」

「儲けていればしません。

借金があって

返済が滞ってしまって・・・。

すみませんでした。

もっと節約して、

もっと仕事増やしてもらって

稼げばよかったんです。

短絡的なことを

考えた俺が悪かったんです。

反省しています。

メンバーにも迷惑かけてしまって。」

 

俺は両手で目頭を押さえて

涙を拭う。

ウソ泣きは、俺の得意な芝居。

今日も絶好調だ。

 

「そうか、後悔しているんだな。」

 

鈴木刑事がトントンと俺の肩を叩く。

 

「その年で返せない借金なんか

つくるからだ。

女か、ギャンブルか、ああ、両方か。」

 

感動のシーンに

若造小川刑事が水を差す。

 

「親父の借金なんです。

町工場を経営していた親父が

取引先の倒産のあおりで・・」

「親父さんは?」

「死にました。自殺でした。

俺が16の時です。」

「そうか・・大変だったな。」

 

鈴木刑事は、

しんみりとした口調で呟く。

やったぜ・・・

俺は腹の中で嗤った。

 

小川刑事も俺の渾身の芝居に

一瞬顔が固まるが、

すぐに机をたたいて反撃にでる。

 

「それでも、犯罪は犯罪だ。」

「はい、わかっています。

ちゃんと自分のしたことは

償うつもりです。」

 

俺は、涙を拭って、

まっすぐに正面を向いて

宣言した。

 

 

それから、

具体的な俺の行動の確認をされた。

 

「どうして、あの家に入ったんだ。

最初から決めていたのか?」

「あの辺を歩いていたら、

あの家の門の鍵が開いていて・・」

 

「玄関の鍵はどうしたんだ?」

「庭に入って

玄関を一応確認したら開いんです。」

 

「あの部屋で何をしていたんだ」

「机や、戸棚に現金がなかったので、

パソコンを

一応立ち上げてみました。

でも、セキュリティが・・・

だめでした。」

 

「貴金属は?」

「見つからなかったので、

取っていません。」

 

 

俺は最後まで嘘をつき続けた。

ネットバンキングの

裏金口座のことは、

芹沢も公にできないから

訴えられないと、

俺は自分の勘に従ったんだ。

 

不法侵入、空き巣だけで、

実被害も無いし、初犯だ。

 

大丈夫だ・・

きっと刑は軽いはず・・・

 

俺はそう信じてじっと連絡を待った。