天使を見た記憶 いつか秒針のあう頃 58 | 青のパラレルワールド物語

青のパラレルワールド物語

青さんが登場する空想小説を書きます。ご本人様とは一切関係ありません。
腐話もありますので苦手な方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リーダー・・

大野さん・・

さとし・・・・

 

どうしてだよ・・

大野さん、あんたがずっとさとしのままなら、

こんなにつらい目にあわなかったのに・・・

 

さとし・・

俺のそばに置いておきたかった。

甘え上手で可愛いさとし・・・

俺にあの絵を送ってくれてありがとう・・

 

さとしに会いたい。

辛い顔のリーダーはもう見たくない。

全部こいつのせいだ・・

こいつが・・・

 

自分の世界から戻り、

顔を覆った両手を下ろして、

前を見たら、

そいつは、

テーブルに突っ伏していた。

微動だにしない。

 

寝てるのか?

それとも、

俺に合わせる顔が無くて、

死んだふりかよ。

 

どちらにしても、

もう俺の用は済んだ。

これ以上一緒にいたら、

目に見えている。

 

俺は。そっと席を立った。

 

 

店を出て一人、

夜の街を歩く。

腕時計に目をやると、

11時を指すところだった。

 

この時間

電話してもいいだろうか?

 

・・いつでも電話してかまわない・・

 

そういわれたことを思いだして俺は、

携帯を耳に当てる。

 

3コールほどで、

電話は繋がり、

低音で落ち着いた声が聞こえた。

 

「はい、柳田です。」

「先生、遅くにすみません」

「構わないと言ったはずだよ、

松本君。」

 

返事をする院長の電話からは、

カランと

グラスの氷が揺れてぶつかる音がする。

 

「飲んでいるんですね。」

「うん、明日は休みなので、

のんびりさせてもらっていた。」

「俺も、さっきまで飲んでました・・・」

「楽しくない酒だったようだね、

松本君」

 

見透かされていた。

 

「先生・・・俺・・

やっと・・やっと。

言えたんです。

あいつに、

リーダーを苦しめたあいつに、

事実を突きつけてやったんです。」

「松本君、

それで君も苦しくなったのか。」

 

図星だったけど、

認めたくなかった。

 

「そんなことよりも先生、

あいつから連絡がくると思います。

先生にまで

面倒をかけてしまって・・・

すみません」

 

自分が納得するまでしつこいあいつ・・

俺の話は信じられないから、

いや、信じたくないから・・

誰かに聞くはずだ。

関係者にね。

 

真っ先に聞くのは先生だろう、

以前無視したとなれば、

なおさらだ。

 

「彼がか・・

どうだろう?

勿論聞かれれば

事実をはなすつもりだ。」

 

あの人を愛しているこの医師は、

あくまでも冷静だった。

どうしてあの人は

この医師を選ばなかったんだろうか・・

人間の感情は時に厄介だ・・

 

「お願いします。

あいつに、

真実が、時に残酷だって事を

わからせてやってください。」

 

俺は、心からそう願った。