天使を見た記憶 いつか秒針のあう頃 36 | 青のパラレルワールド物語

青のパラレルワールド物語

青さんが登場する空想小説を書きます。ご本人様とは一切関係ありません。
腐話もありますので苦手な方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長いコール音の後、繋がる電話。

無言の相手のバックに

聞こえるかすかな音・・

 

波?

そこは・・海岸?

 

「大野さん・・

どこにいるの?

行くから

俺・・いくから・・

場所教えてよ・・

ねぇ・・大野さん・・」

 

何も言わない相手に

必死に訴えかける。

 

信じられないぜ・・

この俺が・・・

天下の松本潤が

ここまで必死にすがるなんて

前代未聞だ・・

 

あんたじゃなければ絶対にしない・・

こんなに、下手にでるなんて・・

 

「大野さん・・

俺が嫌いなの・

信用できないんだ・・

それとも・・あの・・」

「来れないだろうが・・

ドラマ・・・主演なんだろう?

 

頑張れよ・・

見るからな・・」

「って・・たしかに・・・

そうだけど・・

でも・・

 

会いたいよ・・さとし・・

さとし・・もう一度・・」

 

あんたの中の別のあんた。

必死に呼びかけた・・

でも、電話は切れた・

 

もう、だめなのか?

あんたは決めたのか?

どこまでお人よしなんだ?

それとも、

あの人のことが諦められなくて、

世間から逃げているのか?

 

あの波音はどこだろう?

 

静かだった・・

誰もいない場所?

 

俺には一つだけ

思い当たる場所があった。

あんたが暮らしたいといった島。

そこにいる可能性は高い。

だが、今の俺には

そこまで行って

探すだけの時間は取れない。

 

「くっそ・・・」

 

大河ドラマの主演は嬉しいが、

よりによってなんで今年?

そりゃ、グループが解散して、

俺のスケジュールを縛ってきた

ドームツアーがなくなったからだとは

重々承知しては、いる。

いるけど、

俺は、思い切り机をたたいて

立ち上がった。

一連の流れすべてが

あんたを断ち切ろうとしている。

どうしてここまで

悪意に満ちた行動がとれるんだ。

あんたが何をした?

ずっと頑張ってきたのに・・

誰からも評価されないんだな。

あんたの問題行動ばかりが

取りざたされて・・・

 

大野さん・・

でも、俺は諦めないから・・

もう少し時間をくれ。

必ず、俺が力になる・・・

 

 

そう決意はしたものの、

急激に仕事は増えた。

ドラマに、

映画に、

後輩のツアーの演出と、

グループ全盛時と変わらない忙しさに

俺は、振り回され、

あんたを探すことなど不可能になっていた。

何時しか季節は

梅雨を過ぎ、

真夏の日差しが眩しくなってきていた。

 

 

 

 

「松本さん、

今年もたくさん届いていますよ

プレゼント。

その中でも特に大きいのが一つ、

多分額だと思いますが・・

櫻井さんからです。

どうしてここに送ったのでしょう?」

 

声を掛けてきたのは、

顔見知りの事務方のお姉さま。

俺が、契約の関係で、

事務所に出向いたのは、

偶然にも自分の誕生日だった。

 

「えっ、なんだろう。

わかんない。」

 

たしかにおかしい。

俺の住所はしらないはずだけど、

渡すよという、電話もなかった。

 

毎年誕生日には

プレゼントを贈りあう仲の俺たちだったけど。

それもグループが解散してからは、

ない。

去年はもらってないのに。

どうして今年?

もう、半年も会っていないのに。

 

誕生日に絵を貰ったのは、

あんたからだけだな。

と、思い出しながら、

俺は、その大きな荷物を

手に取ってみた。

 

確かに額のようだ。

開けてみるか、

不意に興味がわいた。

表には通常の宅配の送付票が貼ってあり、

J事務所内松本潤様と特に変哲もない。

差出人の名前はたしかに櫻井翔。

住所はない。

 

「これって・・」

「何か?

櫻井さん。」

「これさ、俺の車に積んでおいてよ。

俺、社長に会ってくるから。」

 

俺は、事務室を出ると

エレベーターホールまで走った。

 

早く、契約書へのサインを終えて

家に帰りたい。

あの荷物を開けたい。

だって・・、嘘だろ・・

荷物の送付票に書かかれていた文字は、

あんたの字だったから。