TWO TO TANGO 179 和57 | 青のパラレルワールド物語

青のパラレルワールド物語

青さんが登場する空想小説を書きます。ご本人様とは一切関係ありません。
腐話もありますので苦手な方はご注意ください。

 

 

 

 

「ム・・」

「ン・・・・ハァ・・」

 

甘い感触にいやでも興奮してくる。

そうなることは

十分に知っているだろう智は、

唇を離すと、じっと俺を見つめた。

智、俺に抱かれたいのか?

抱いてって一言いってくれ、

俺の背中を押す言葉を。

だったら、俺はいつでも・・・

だが、俺の耳に聞こえたのは違っていた。

 

「和がしたいなら、僕はいいよ。」

 

目を伏せて、

恥ずかしそうに

俺の肩に顔を押し付ける。

それは誘惑と言っていいくらい、

男心をその気にさせる甘い罠にも、

似ていた。

だが、違う。

その言葉は違うんだ。

 

でも、俺は抱いている智の体を

そっと押しやった。

 

「それは、俺がしたいなら、

自分はそれでいいってことか。」

「和・・・」

 

智がはっとしたように顔を上げた。

 

「抱いて欲しいじゃない・・。

つまり、相手が望んでいるなら、

それを受け止めることが

自分の役割、使命だってことだろう?」

「・・・・・・」

 

黙り込む智。

 

わかった。

ようやくわかった。

翔が、そして智が起こしたとされる

事件の相手の堕ちた罠が。

二人とも智のこの言葉を誤解、

いや、自分にいいように解釈したんだ。

そして、思い込んだのとは

かけ離れた智の言動に怒り、

智を糾弾したんだ。

 

智をこんな風に卑屈にした

大山沙枝を俺は絶対に許さない。

お前の娘の沙都子を

同じように苦しめてやるから、

待っていろよ。

 

さっきまでの幸せな気持ちが消えて、

俺は我慢できない怒りが湧いてきていた。

豹変したかのように、

顔がこわばっていく俺を見て、

智が驚いたように、後退りしていく。

そして壁に背中がぶつかると、

そのまましゃがみこんだ。

 

「ご、ごめんなさい、和。

怒らないで・・

僕が・・悪かったから・・・。

怒らないで・・」

 

怯えた顔で

壁に背中を押し付けたまま、

俺に向かって必死に謝る智。

 

俺は、しゃがみこんだ智の体を

抱えるようにして立ちあがらせた。

 

「怒ってないよ、智。

ごめん誤解させた。

 

俺は智が欲しいよ、

だってさ大好きなんだぜ。

だけどそれは

智が俺に抱いて欲しいって

強請ってくる日まで

取っておくよ。

今、そう決めた。

 

実はさ、

さっきまで智のこと

何時襲ってやろうかって、

チャンスをうかがっていたんだけどさ。

愚かだなって気が付いた。

そんなのは、もういらないんだ。

体だけの関係は、

もういらないんだ。

 

智、俺は智を大切にしたい。

だから今夜は抱かない。」

「和・・

本当にいいの?

僕を抱かないの?

それで・・い・・いの」

「いいんだよ。

智はそんなことしなくていいんだ。

智は大事な人なんだよ。

特別な存在なんだよ。」

 

泣きそうな顔で必死に縋り付く

智の体を胸に抱きしめながら

俺は大山沙枝に対する怒りに震えていた。