TWO TO TANGO 175 潤55 | 青のパラレルワールド物語

青のパラレルワールド物語

青さんが登場する空想小説を書きます。ご本人様とは一切関係ありません。
腐話もありますので苦手な方はご注意ください。

 

 

 

 

「沙都子さん、昨日はわざわざ手土産までありがとう。

母がとても喜んでいたよ。

あの店のバームクーヘンお気に入りだったらしい。」

「そうなのですね、潤さん。

よかったです、気に入って貰えて。」

 

俺は事務所にいる沙都子と電話していた。

最初に電話に出るのが大山沙枝だと知っていたから。

 

「大野弁護士にお会いしたいんだけど、

都合を確認してくれるかな?。」

「えっ、父に?」

「そうだよ、交際のお許しを得ないとね」

「潤さん、それって‥本当に?」

「ああ、俺は本気だよ。本気になったんだ。」

「嬉しい・・

はいわかりました。

すぐに確認します。

また、お電話しますので。」

 

明るい声で電話を切った相手に、俺は呆れる。

何を喜んでいるんだか、大野沙都子。

お前のせいで智はずっと苦しんできたんだ。

俺がお前を好きになるはずないだろう。

 

和に宣言したとおり

俺は沙都子を騙すことができた。

簡単だって言ったはずだぜ、和。

 

何度かデートを重ね、

わざわざ家に連れて行き、

母親に会わせ、

もちろん母親には適当な作り話を吹き込み

世話になった弁護士と伝えてある。

大病院の院長婦人であり、

大物政治家である爺さんの娘の母親は

おっとりとしたお嬢様がそのまま歳を取ったような人だ。

誰にでも、にこやかに上品に接するし、

曖昧な表現しかしない。

だから、皆自分は好かれていると錯覚する。

大野沙都子も誤解したのだろう。

勿論俺はそれを計算したんだけどね。

 

 

「和、来週大野啓輔と会うぜ。」

「予定通りだな、潤。

全く、そうやって何人騙したんだよ。

色男め。」

 

俺の電話を受けた和は上機嫌だった。

いつもと違う。

 

「お前、なんか機嫌いいな。

何かあったのか?」

「ふふふ・・まぁな」

 

俺の問いにはっきりと肯定する和。

おまえ、何をしてた?

俺に沙都子の相手をさせている間に。

 

「ともかく、相手は、海千山千のやつだ。

沙都子の様に簡単には、騙せないぜ。

しくじるなよ、ここからが勝負だ。

大山沙枝を土俵に引きずり出すんだ」

 

にこやかな声から急にトーンが変わる。

 

「今、大山沙枝の母親のことを調べている。

あの女を追い詰めて、排除したら、

大野啓輔にかならず智に謝罪させてやる。」

 

和の怒りが俺にはよくわかる。

智・・

待ってろよ、かならず助けるから。

そしたら俺のもとに・・

 

俺は知らなかったんだ、智が誤解していたってことを・・

そして忘れていた。

智のことが欲しいのは、俺だけじゃないってことを。