魔王8  | 青のパラレルワールド物語

青のパラレルワールド物語

青さんが登場する空想小説を書きます。ご本人様とは一切関係ありません。
腐話もありますので苦手な方はご注意ください。

 

 

 

 

和5

 

 

 

 

 

 

部屋に入ってきた若い男の顔を一目みた瞬間、

これはもらったぜと腹の中で嗤った。

 

横に座ったサトは、

また自分の世界に入っているのだろう、

ドアの方を見ることもせず、

うつむいてじっと自分の手をみている。

知らない人間との接触を異常なほど、怖がって・・

仕方ないけどねぇ。

あんなことされたらさ・・

 

 

 

「俺ですよ、俺。

サングラス掛けないとわかんないですよね、」

 

イラつくくらいに、気が付かないあいつ。

仕方ない、あまり他人に見せたくないけど。

ポケットからサングラスを出してかけて見せた。

 

アッ、と言ったあいつの顔が面白いほど、蒼白になった。

やばいだろ、

とぼけてんじゃねえよ、墓穴を掘るなよ。

 

「櫻井さん、大丈夫?

誰かと誤解しましたか?

俺ですよ、和。

サングラスを日常的にかけている方に

怖い目あったことあるのかなぁ。

嫌だなぁ、本当にわかんない?」

 

いい加減気づけよ、このボケ。

 

俺は腹の中で毒づきながら、

そばに寄って顔を見せるふりで

耳のそばでささやいた。

 

「普俺に接しろよ、困るのはお前だ。

俺に合わせろ。」

 

びくっと眉が動いたが、

さすが喜多川物産に入社できたやつ。

ヘタレで、ボケだけど、馬鹿じゃなかった。

 

「あ~、和?

和だ。

ごめん、ごめん、

まさか、こんな場所で会うとは思わなかったからさ。」

 

さっと、話を合わせてきた。

まぁ、ここで失敗したら終わりだもんなぁ。

 

「櫻井君、君の知り合いなのか?」

 

前に座った偉そうなおやじが不審げな顔で

あいつに聞いている。

 

「あ、翔さんは、

俺のバイト先の定食屋のお得意さんです。

ストームだけじゃ、食べていけなかったから、

俺ずっとバイトしてて。

ストームの仕事は

体を張ったものが多いからきついし、

時間も不規則だから、

バイトをするのはたいへんだったけど、

おかげで料理は上手くなったし、

知り合いもたくさんできて

止めないで続けていて

よかったって思っています。

ちゃんと、今も自炊していますから。」

 

下積み時代は、苦労したって、

さりげなくアピールしてみる。

もちろんこいつとのエピソードは、

全部嘘だけどさ。

ここは俺の演技力が試されるところさ、

上手くだませるかどうかってね。

でも演技には自信があるからな、俺は。

心配なのは、こいつがついてこれるかってこと。

 

でも、心配することはなかった。

こいつ、櫻井翔は上手く話を合わせてきた。

俺が真面目に仕事していたとか、

それなのにいつもサングラスをかけて、

売れてないのに、芸能人だからって

変に顔だしをさけていたとか。

そりゃ、必死だよな。

 

「櫻井さんは、

かれらの下積み時代をご存じなんですね。

そうなんですよ、苦労していますよ。

でも、そうは見せないところがまた健気でしょう。」

 

いやいや、金持ち息子の残り3人はしてないし、

苦労の苦の字もね。

 

「だから、真面目で、仕事はしっかりするし、

5人それぞれ個性があって、

だからファン層が広いんですよ。

あっ、ここにいる彼、サト。

ちょっとぼ~としているように見えますが、

歌がすごくいいんです。

透明感のあるハイトーンボイスで。

CMとのタイアップ曲、絶対にヒットしますから。」

 

俺の苦労話にかぶせるように売り込む城島さん。

この手の人情話が得意なんだよな、このおっさん。

 

「それでは、ストームで

企画案を早急に作成させていただきます。」

「よろしくお願いします。」

「ありがとうございました。

頑張ります。」

 

 

交渉は俺らに勝ち。

部屋を出る時、

櫻井翔が怯えた顔で俺を見た。