negai  続8 翔4 | 青のパラレルワールド物語

青のパラレルワールド物語

青さんが登場する空想小説を書きます。ご本人様とは一切関係ありません。
腐話もありますので苦手な方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、いえ。

櫻井課長ではなく、弟さんのほうに・・」

 

親父の方の刑事が、なんで俺が返事をするんだと、

へんな顔をする。

あんたは櫻井だけど、課長様だろうよ・・

 

「あ、潤は・・」

 

俺がしゃべろうとした横から

潤がスラスラと説明しだした。

 

「ああ、俺は櫻井じゃないですから。

両親が離婚して俺は母親に引き取られ、

母親の再婚した相手の養子になっていますので。

松本と言います。

松本潤です。」

「はぁ・・

そうだったのですか。」

「都内の中高一貫校である

東山学院の教師をしています。

兄の母校ですが。

俺は義父の仕事の都合で中学の途中から

アメリカにいました。

なので、東山学院には通えなかった。

行きたかったのですが。

あっ、すみません。

話がそれました。」

「いえ。

分かりました。」

 

親父が、潤と俺を交互に見ているのがわかる。

 

「櫻井課長もいろいろご苦労されたのですね。」

 

別に同情して貰いたい訳じゃない。

早く俺を開放してくれ。

あの人が心配なんだよ。

 

潤が続ける。

 

「大野さんは、長くアメリカにいたのですが、

父親が亡くなって帰国し、仕事を探していた時に

母校の理事長に代替として来て欲しいと

頼まれたと聞きました。」

「母校?」

「ええ、大野さんは東山学院の卒業生です。」

 

潤、そこまで言うのか。

 

「潤。おまえ・・」

「まずは兄貴、俺に詳しい話を聞かせてくれよ。」

 

潤が俺を見つめる。

その瞳は真剣で、そして優しかった。

お前だってあの人のことを愛していたはず。

それなのに・・・

 

「潤、呼び出して悪かったな。

おまけに取り乱したりして。

突然のことに動揺してしまった。

恥ずかしいよ。」

 

俺が謝ると潤は、ゆっくり首を振った。

大丈夫だよって小さな声で囁く。

 

「俺は昨日H大の博物館に初めて足を運んだ。

札幌に赴任して半年。

毎日がマンションと職場の往復。

たまに出かけるのは、

スーパーと、飲み屋。

半年の間それだけだった。

だけど、昨日、急に行ったんだ。

どうして行こうと思ったのか、

自分でもわからなかった。

 

ゆっくりと見ていたら閉館時間になって、

出口で傘を探していたら、

大野さんが見えたんだよ。

だから声を掛けた。

偶然だった。

俺も驚いたけど、

彼も驚いていた。

俺と会うとは思わなかったのだろうな。

俺がこっちに転勤したことを

知らなかったはずだから。

 

エントランスの真ん中で

立ち話をしていたら、

いきなり男がぶつかってきて。

凄い勢いだった。

黒いサングラスに

黒いスーツの大柄な男だった。

俺が危ないだろうって

怒鳴った時には走り去っていた。

そして大野さんは、倒れた。」

 

抱きしめていたことは、黙っていた。

 

「そんな・・・こと・・って」

 

潤が絶句している。

固く握りしめた指が震えていた。

 

「大野さんが、

人から恨まれているようなこと

はなかったですか?」

 

若いほうの刑事が、ずばり聞いてくる。

 

潤、なんて答える?

 

「あの、情報は届いてないのですか?

恨まれているというか、

口封じでしょう、完全に。」

 

潤、お前・・・。