「さ・・・とし?さとしって名前なの、
息子の名前。
何歳くらい、ねぇ梅さん。」
さとしって、あのさとしだよね、絶対。
大野沙都子にそっくりな南条真智子。
その南条真智子に似ている息子のさとし。
間違いない・・
あの女性は、さとしだ。
さとしが、大野沙都子のふりをしていたんだ。
姉の・・・
やっと、やっとみつけた。
俺が初めて会った大野沙都子に、
妙に惹かれたのは、
彼女の正体がさとしだったからだ。
そうか、納得した・・
って違うだろう・・
そうと、分かれば、
さとしのいる場所を聞かないと・・
「梅さん、だからさぁ、
その息子のこと、詳しく教えてよ。」
俺は、茶碗をおくと、身を乗り出した。
「まぁ、潤さん、どうして、
そんなに気になるのですか?
綺麗な子だっていっても男の子ですよ。
確か、年は翔さんと同じ歳だったような?
そうそう、南条さんとこの
相葉さんの孫と同じ歳だったから。」
「南条さんとこの相葉さん?」
俺には梅さんの言っていることがわからない。
「いえね、小学校時代の同級生の春子さんが
嫁に行った先が相葉さんで・・」
「嫁に行った先?」
「その春子さんがお勤めしていたのが、
南条さんのお屋敷で、
春子さんの孫の雅紀君が
智君と仲良しなんですよ。」
はぁ~やっとわかったよ。
「それでさ、さとしってどう書くの?」
名前を聞かないとね。
「知るに日で智ですよ。
活動的な子ではなかったから、
あまり見かけたことはありませんでしたが、
ほっそりしていて、小柄で、
大人しい感じの子でしたね。
あまり、記憶に残る子じゃなかったですけどね。
ただ、
綺麗だったことはよく覚えていますよ。」
綺麗・・
そうだ、子供の頃はよくわからなかったけど、
智は綺麗だった。
「それで、智は今どこにいるの?」
「春子さんの孫のところだって聞いています。」
相葉雅紀という人のところってこと?
梅さんの話は肝心なところが謎なんだよな。
俺が頭を掻きながら、
首を捻っていると、名前を呼ばれた。
「潤さん、南条さんの息子の智君のことが、
しりたいのですか?」
「あ、山田さん。」
それは、管理人の山田さんだった。
「ええ、最近、某所で見かけて。
昔、この別荘に来た時に
よく遊んだのが彼ではないかと思って。
懐かしくて・・」
俺は先日のパーティのことは黙っていた。
言わない方がいい。
だって偽者を務めていたんだ。
外には漏らさないほうがきっと・・
「智君は、都内の大学に進学した
相葉さんところの雅紀君のアパートで、
一緒に暮らしています。
雅紀君が軽井沢を出た1年後かな?
智君はここにいられなくなったから。
大野さんは大変だったと聞きました。」
山田さんは、そのことを思いだしたのか、
少し暗い表情を見せた。