母校(中学)に行くと、もう一つの中学校の担当の先生も来ていた。

 俺も入れて5人になる。エアコンはない。扇風機と麦茶で涼をとりながらである。

 

 どちらの学校も、探究学習はやや煮詰まっているらしい。

 確かに、中学生に「人口減少の解決策は」「財政赤字をどうするか」という問いを投げかけてもありきたりな答えしかないだろう。ネット検索をして、他の自治体がやっている策をコピーするだけだ。

 それだと「婚活、移住、誘致」の三題噺になってしまう。市政刷新ネットワークがこの町でも行った施策だ。

 …それは煮詰まるでしょう。

 

 発想を逆転した方がよい。

 先生も生徒さんも「解決策」を見つけようとしている。

 そうではなく「課題」を見つけるんだ。

 みんな、「人口が減っている」「他の自治体より高齢化が進んでいる」「市の予算には限りがある」という課題は共有できている。ここから、個々に具体的な課題を見つけてはどうだろう。

 たとえば、「お祖母さんが一人暮らしをしているのが心配だ」という感情は、立派な課題意識である。ここから「家族と同居している」「高齢者夫婦の一人暮らし」「独居老人」の数を調べ全国・この町で比較するデータを作る。そこから自分ごととしての課題を立てることが考えられる。

 

 高校生には看護師になりたいという生徒が多い。みんな志望理由書の書き方の例文のような志望理由を書いてくる。本人に会って、なぜ看護師になろうと思ったのと聞くと、「うちの町には産婦人科がないから、出産のときは隣の市の大きな病院に行く。それは本人にも家族にも、経済的にも肉体的にも負担が大きい。だから看護師になって女性を支えたいと思った」と言う。志望校は看護師の資格しか取れない。

 「助産師って知っている」と聞くと知らないという。「助産師と訪問看護について調べてごらん」と伝える。その場で調べさせると目が輝く。私がやりたいのはこういうことですという。「こういうことを志望理由として書いてごらん」というと、本当のことを志望理由で書いていいんですかと言う。

 この町の高校生は「世間によくある志望理由を書かないといけない」「本当のことを書くと落ちる」という思い込みがある。この思い込みから解放すると、とてもよい志望理由を書いてくる。

 志望理由は「人口減少・産婦人科がない」という町の課題に対し、自らが看護師・助産師となって出産に関するケアを行うという流れになる。課題発見とその解決の流れが成立する。

 課題を自分ごととして具体化できれば、解決も具体的になる。解決策も実現可能なものになる。この生徒さんの場合、志望校を助産師の資格を取れる学校に変更して合格すること、そこで訪問看護のシステムについても学ぶことになる。ちなみに、県外の公立大学の看護科にAOで合格した。

 

 まず課題ではないですか。あと課題にも解決策にも「模範解答」を示そうとしていませんか。それでは煮詰まるでしょう。個人が抱えている本当の課題意識を引き出した方がと思います。その方がオリジナリティーの高い課題設定ができるんじゃないですかね…と伝えてみた。

 

 そこから盛り上がった。続きは飲みながらとなった。

 一番若い先生が、5人集まる機会はなかなかない。涼しいところで壁打ちしましょうと言う。うれしいが合宿明けの俺はちょっときつい。

 でも、行くしかない。

                        つづき…