市政刷新ネットワークには、俺が中学生の頃から議員を続けている人がいる。

 一般的には権力への執着と考えられる。その執着はどこから来るかと考えると、議員を辞めると何か不都合なことがあるという推測が成り立つ。

 

 彼らが議員をしているのは、自らがオーナーをつとめる企業への利益誘導のためである。公共事業の情報を誰よりも早くつかんで受注する。あるいは道の駅や田んぼアート事業などを立ち上げ、それを市の事業とし建設・運営に関する予算を公金からいただくためだ。

 彼らのビジネスモデルは「公金」を貰うことを前提としている。そのためには市議会議員であることが前提条件と言えるだろう。

 ただ、こうしたビジネスモデルはもう古い。不正・癒着という犯罪行為と言えるだろう。人口減少時代の日本で、このようなビジネスモデルは自治体の財力を奪い、市民の暮らしを脅かすものだ。

 

 だが独裁国家は意外と倒れにくいものだ。独裁者の周辺には、独裁者によって特権を与えられている高級官僚がいる。もし独裁者が倒れれば高級官僚も生きてはいけない。もし、市政刷新ネットワーク代表のXさんやW議員がチャウシェスクのようになってしまえば、市政刷新ネットワーク関係者や支持者は…ということだ。

 

 ところで…この町で独裁者はどちらだろうか。

 S市長なのか、市政刷新ネットワークなのか。おそらく市民は気づいている。市政刷新ネットワークの方が独裁者なのだ。だからこそ、市政刷新ネットワークとその支持者はS市長を憎悪し団結を強める。

 

 議会の途中、市長がW議員を注意した。

 W議員がまた寝ていたのだ。どれくらい寝ていたのかなどの状況はわからない。映像がないからだ。だが、目をつぶっていたことは間違いなさそうだ。それは議長がW議員を庇うような言動を取ったことでわかる。また、頭のよいS市長が感情的に注意することは考えにくい。そういう状況が事前にあって、タイミングを見計らっていたと考えられる。

 議事が終了すると、W議員は真っ先に議場を出た。議員と市長とは出入りする扉が異なる。W議員は市長の出る扉の前に行って「お前、ちょっとこっちへ来い」と叫んだ。S市長はそういう事態を想定していたのではないか。Sは冷静に、みなさんのいる場所で話し合いましょうと言いながら、議会事務所の前まで来た。

 その様子を、その場にいた市民の一人が動画で撮っていた。

 動画を見ると、W議員の視線がカメラをとらえており、撮られていることへの自覚はあったと考えられる。この動画が、市長を応援するYouTube作成者の手に渡った。W議員が市長を恫喝??している動画は瞬く間に拡散した。

 

 S市長はこの件を深掘りしなかった。

 動画がすべてを語ると考えたのかもしれない。特に言及はしていないが、動画を通じて市民にボールを投げたと言えるだろう。

 もちろん、W議員はカンカンである。だがその主張は「ああいう動画を撮るヤツが悪い。それを拡散するのも見るヤツも悪い」である。もちろん、市政刷新ネットワーク最年長であるW議員に逆らう人いない。みんな、そうだそうだといって同調している。だがW議員が席を外すとため息をついている。

 市政刷新ネットワークのブログに書きますかと声をかけても、山川さんからの指示はいつものように具体的ではない。

 

 少し空気が変わりつつあるようだ。