中学校の探究学習で「未来を根拠に考える」というワークを行った。
先生方には喜んでいただけようだ。その話は教育長にまで届いたらしい。
もう一つの中学でも同じワークをすることになり、その時は教育長が見学に来た。
さらに、地元の農業高校からも声がかかった。キャリア教育のゲスト講師らしい。
テーマは「未来を根拠に考える」だが、少し内容はアレンジしないといけない。
教室には「こいつ何しに来たの」という空気が満ちていた。
県庁所在地の高校から早稲田大学という経歴はここではアウェイである。
なぜなら、彼らはこの町の大人から「この町の高校生は頭が悪い」「農業高校はとくに頭が悪い」と言われている。俺はそういう大人の代表のような存在に見えるだろう。
都会には受験戦争あって偏差値的価値観に支配されていると言われている。
とんでもない。田舎の方が偏差値的価値観で人間を序列化している。田舎の進学校の教育とは、国公立大学合格者の大量生産に過ぎない。その価値観は実業高校の生徒を見下す発想にもなる。実にくだらない。
さて、アウェイの教室でまず日本の人口変動のグラフを示した。
よく「少子高齢化」というが、もう少し踏み込むとその根源には「人口減少」がある。現在の想定は、2100年に日本の人口は現在の1/3~1/4になるというものだ。
この市の人口は現在約2万人である。昨年この町で誕生した子供は110人。
110人×80年=8,800人。この数字が2100年のこの市の人口かもしれない。
ここで質問があった、「人口が減るのはこの町だけの問題じゃないんですか」。
日本全体の問題です。さらに言えば、ヨーロッパ主要国も人口減少が進んでいます。そこでは「人口を増やす」のではなく、「人口が減っても大丈夫な社会にすること」が進められています。
少しアウェイの空気が緩んだ。ここからは自分の言葉でしゃべった。
僕は18歳から31歳まで13年間東京で暮らしました。
まず大学に入って驚いたのは、同級生の半分以上が地方出身なのです。
演劇サークルの同期11人のうち、都内の高校出身者は2人しかいませんでした。
なぜ東京にはたくさんの人がいるかわかりますか。進学や就職で東京に出てくる人が多いからです。そのうち半分くらいの人は、そのまま東京で暮らし続けます。
さて、みなさん気づきましたか。
地方の人口が減ったら、東京の人口はどうなるでしょう。
一つデータを示しますね。この市の出生率は2.1です。東京は1.1です。
今、東京の人口は増え続けていますが、2100年はどうでしょう。
この町の人口は減っています。しかし、出生率は東京より高いのです。
この町には、東京よりよいことがたくさんあるんです。
つづく…