平成の大合併以前の5町が建てた施設、市になってから新築した施設、新たに立ち上げた事業がある。ビルトandビルトである。

 Sが市長となって、こうした事業の見直しが始まった。

 市民には、「S市長は何でもつぶす」「反対した市役所職員は左遷された」「職員は市長に何も言えない」という人もいる。なぜならそのような「噂」を市政刷新ネットワークが流しているからだ。

 

 5町の時代の最後にそれぞれの町が公民館、プールなどの公共施設を新築した。

 市になってから「市民会館、温泉付き宿泊施設、道の駅」と次々に新しい施設ができると「この町は発展している」と思う市民は多い。「財政的に苦しいと言われているが大丈夫じゃないか」「補助金や交付金を引っ張ってきた市議会議員は偉い」という人もいる。

 だが、市の予算は赤字決算である。また、それぞれの建設・運営には市政刷新ネットワークの参加者であるXさん、Yさん、W議員、山川さんが絡む利権構造が存在する。

 

 Sが市長になって見直しした事業には、Xさん、Yさん、W議員、山川さんが関係するものが多い。それは「市からの予算補助を前提としたビジネスモデル」であり、「収益構造がない、市の課題解決に結びついていない、市の財政赤字の要因となっている」からである。Sでなくても見直す事業だ。

 

 そもそも、市政刷新ネットワークの人々には「市の課題解決」を考える力はない。市の課題を正確に理解できないからだ。

 たとえば、人口減少は「出生率の低下~婚姻数の減少」が原因と言われている。だから「婚活で婚姻数を増やすのだ」というのが市政刷新ネットワーク的発想である。

 しかし「市の人口減少」は、自然減よりも社会減の方が要因として大きいのだ。

 

 市の合計特殊出生率や婚姻数は全国平均を上回っている。課題は社会減だ。

 高校卒業後に就職・進学で市から離れた若者が戻ってこない、子供の小学校・中学校・高校進学に伴って一家転住してしまうというケースが多い。一度市から離れた若者で戻ってくる者は少ない。

 ちなみに戻ってくるのは男性の方が多い。俺と同じで長男・家を継ぐために戻ってくるのかもしれない。

 戻ってくる女性は少ない。それは、市民の40%を占める高齢者の価値観の古さだ。

 「女に勉強は必要ない」「結婚したら専業主婦として家庭に入り家業を手伝う」がまだスタンダードな価値観だ。だから、勉強したい女性・働きたい女性は町から出る。町から出れば、この町の常識が世間の非常識であることに気づくだろう。

 ここが課題なのだ。だが、市政刷新ネットワークが気づくことはない。

 

 さらに言えば、人口減少対策=婚活事業、観光振興=道の駅というのは「地方自治体によくある事業」である。彼らが始めた事業はすべて「どこかの自治体がやっていることのコピー」に過ぎない。

 「市の課題を見極める、見極めた課題に対して有効性の高い解決策を創造する」というクリエイティブな発想は全くない。それで人口減少や財政赤字が解決するわけがない。

 そういう「市の課題解決につながらない事業」「財政赤字を導く事業」「財政赤字から市民の目をそらす事業」を見直したことがS市長の功績・実績と言ってよい。

 そして、教育の課題解決につながる予算を増やした。

 ちゃんと「スクラップandビルド」しているのである。

 

 しかし、市長憎しという感情に取りつかれている市政刷新ネットワークに、冷静で客観的な思考力はない。そして俺は「そういうレベルの市民にわかりやすい主張」を市政刷新ネットワークのブログに書く。俺の書いたブログを信じている人は「そういうレベルの人」と割り切ることで、俺の精神はギリギリ保っている。