前々市長の時に市議会で承認された「田んぼアート事業」は、Sが市長になってから見直しの対象となり、収益性がないとしてストップになった。
これ以降、事業見直しが進み、いくつかの事業は廃止となった。
話題となったものに「婚活事業」がある。
人口減少対策という名目で始まり、三十数組が結婚した。数年続いたこの事業には合計で2,000万円近い市の予算が注ぎ込まれている。婚活事業と言っても、お見合いと合コンとを兼ねたようなイベントを打ち、そこでカップルが成立すると世話人が付き、結婚すると「世話人に報酬として30万円が支払われる」というシステムだ。
この事業にもXさんが絡んでいる。そしてXさんの仲間のYさんが世話人の元締めをしている。Yさんは10組ほどの世話をしたそうだ。つまり300万円ゲットしている。
ちなみに、この事業で結婚したカップルにお祝い金などは出ない。金銭的メリットは世話人にしかない。お見合いパーティーの開催時、女性の参加者が足りなくて市外の既婚者をサクラとして呼んだという噂もあった(この噂については後日、Yさんが実質認める発言をしている)。
市長となったSは、この事業に×をつけた。そもそも、人口減少は日本の課題であり婚活事業程度のことで止めることなどできない。それは、俺が探究学習の1時間目で中高生に伝えていることでもある。そして中高生はそれを理解する。
しかし、市議会議員という社会的地位にある60歳をこえたいい大人が、そのことを理解できない。というか欲に目がくらんでいるのか、そのことを受け入れようとしない。
美術館もそうだ。これも年間2,000万円が注ぎ込まれている。美術館は市の直営だ。Sは、まず美術館の閉館を提案した。
閉館して美術館の指定管理者を公募する。閉館後は会計年度職員を雇って美術品の管理をする。指定管理者の応募があれば審査し、委託が決まれば再開する。しかし、委託先が決まらない場合、美術館は廃止する。これには山川さんがかみついた。地元町の事業なのだ。閉館への反対、さらに指定管理企業の推薦などを試みた。しかし指定管理企業はS市長を揺さぶるための方便であってそのような企業はない。
さらに、山川さんがオーナーである観光協会への補助金も減額された。
この間、Sが市長として見直しを進めた事業の多くは、Xさん、Yさん、W議員、山川さんが絡んでいるものが多い。彼らはそれを「市長に狙い撃ちされた」と信じている(そして「市政刷新ネットワーク」が結成された)。
しかし、俺はそうではないと考えている。
それだけ「やばい事業」だったのだ。
彼らのビジネスモデルは、「事業を立ち上げる~市の事業にする~市の補助金で従業員の給与・事業費・運営費をまかなう」というものだ。つまり最初から事業収入による運営を想定していない事業と言ってよい。むしろ赤字経営にすることで市からの補助金を増額するシステムと言っても過言ではない。しかも彼らは市議会議員であり、その予算を提案・承認する立場にある。
Sが事業見直しを進めたのは、それぞれの事業の非採算性を見抜いたからと言ってよい。しかし、彼らは事業の悪質性を棚に上げ、市長が恣意的に狙い撃ちしていると声高に主張する。
そして、それぞれSへの憎悪をたぎらせる。